2023年第136便₋1
稲わら回収
今年の稲わら回収は好天に恵まれたおかげで昨年よりも回収圃場が増えました。しかしその反面、猛暑と雨が少なく米作りにとっては高温障害などの影響もあり米農家にとって大変だったと思います。稲わら回収の時に一番気にしていることは圃場の状態です。どういうことかというと、作物には収穫のタイミングがあります。圃場がぬかるんでいてもコンバインが走れるなら当然稲刈りをする訳です。そんな状態でコンバインが走ると溝が出来てしまい、その上にワラがあると土も中々乾かないし、乾く前に雨が降るとその溝に水が溜まって余計に乾かないという悪循環に陥ります。
ワラはトラクターにロールベーラーという機械を付けてロール状にして回収するので土が乾いていないとどうすることも出来ません。仮に無理矢理回収ができてもその後の堆肥散布は機械で行うので、結果的に農家の圃場を痛めつけることになります。回収する側にとっても機械の負担が大きく、ぬかるんだ状態で稲刈りをする際はワラを残さないようにお願いしています。しかし、今年に関しては猛暑と雨が少なかったため圃場がよく乾いておりそういう心配はほとんどありませんでした。逆に農家から「よく乾いてるからワラ残しておいたで」とこちらから声をかける前に言ってもらうことが多かったです。そういった好意的な声掛けは非常にありがたく回収作業のことも考えてくれているのだと感謝しております。
そして、今年の冬の堆肥散布もそうでしたが、ワラ回収も一緒にやってくれる農家もいます。稲わらをロールベーラーで丸める前に反転・収草をするのですがその作業をやって頂きまし
た。そうやって一緒に作業をしているとこちらも気が引き締まります、何よりも楽しいです。そういう関係性をこちらから作っていくことの大切さを感じるとともにこれからどう働きかけていけばいいのかもう一度考える今年の稲ワラ回収となりました。この原稿を書いているのが11月の初旬なので晩生の米のワラ回収をしている所ですが、昨年以上の回収量となりそうです。
昨年はロールベーラーの調子が悪くロールにする時の圧力を抑えていたけれど、新しいロールベーラーにしたことと圃場が増えた分多くなったことで、今年のロール数は600本を超えそうです。これから堆肥散布もあり、年末まで忙しい日々はまだまだ続きますが、事故等がないように気を付けてやっていこうと思います。
(能勢農場 道下 慎一)
繋ぐ事業
また今年も稲わら回収のシーズンがやってきました! 今年は天候にも恵まれ、かなり順調に進んでいます。
今、色々な事が分断されている時代です。もちろん農業、畜産も同様です。それぞれの立場や、都合だけで考えればほとんどが輸入されている原料で作られたエサや、同じくほとんどが
輸入されている原料で作られた堆肥を使えば自分達の都合にあったやり方が出来ます。大きな牛を育てる、沢山のお米を収穫する。それだけを考えれば決して間違ったやり方ではありま
せん。じゃあなんでこの事業が10年以上も続いているのか? 畜産、農業、似ているようで違う異なった業種が連携していけるのか? それはお互いの利益以外の部分で重なる思いがどこ
かに有るからだと思います。農家さんは私たちの事を考え、想像し回収しやすいように稲わらを残してくれる。私たちは農家さんの事を考え、想像し、回収、堆肥散布をする。天候やタイミングもあるのでお互いに会話をして進めて行く、もちろん上手く行かなくてお互いに我慢することもあります。そういった事を繰り返して少しずつ関係が出来ていく。そしてその関係が能勢という地域を作っていく。少しオーバーかもしれませんがそういったお互いが支え合っている関係が有るからこの循環が成り立っているのではないかと思います。
全ての農家さんと上手く関係を作れている訳ではありません。それでも中にはお互いの事を考え合う関係を作れた農家さんもいます。おそらくひと昔前は当たり前のようにほとんどの
人がその様な形で繋がっていたのかもしれません。少しオーバーかもしれませんが町と田舎が分断され、各生活(仕事)が分断され、せいぜい自分たちの属している組織くらいはなんとか繋がっているような…。そんな中で稲わら回収、堆肥散布は農家さんと能勢農場を繋ぐこの地域にとって今では無くてはならない事業なのでは? もっと広い目で見れば、よつ葉のお米や、牛肉を食べてくれている消費者の方たちもその繋がりの中に入っているのではないでしょうか。
利益や自分たちの都合だけではない繋がりのきっかけを作ってくれているこの稲わら回収、堆肥散布を通してこれからもできていく繋がりを楽しみにまた来年も会話し、考えこの事業を
続けていきたいです。
(能勢農場 杉田 敦)