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よつ葉ホームデリバリー

2025年第141便₋1

 

 

能勢の里山をあかうしと守る 

 

今年1月20日トランプ米大統領が就任した。彼の独善的で強硬な取引による交渉は自国の利益を優先させることのみを目的にしていて、当然ながら相手に怒りを買いながらも呑まざるを得ない状況を作り出している。パレスチナとイスラエルの戦争はトランプの介入により段階的には停戦へと進んだがその後の発言でガザをリゾート地にするだの、ウクライナとロシアの戦争については当初ウクライナを蚊帳の外にした話し合いをロシアと進めたりと、自国にとって有益になる事ばかりのやり方は日本にも向けられてきている。
 
自動車の関税はもちろんだが農畜産物とりわけ牛肉・豚肉の輸入枠拡大や関税の引き下げなどを要求をしてくることは明らかであり、2年前よりの戦争やガソリン等燃料の高騰により生活必需品もそうだが農業資材や種子、飼料価格の高騰は高止まりが続いている。アメリカだけの問題ではないにしろ日本の農畜産業は厳しい状況になっていくと思われる。
 
能勢農場では昨年より兵庫の能勢農場春日牧場周辺での自給飼料(WCS)の生産を地域農家に作ってもらえるような取り組みを始めた。その背景には丹波協同農場の元代表である故近藤亘氏や能勢農場春日牧場が地域の中で果たしてきた事を評価してもらえている事が大きいと思う。
 
大阪の能勢農場では昨年の夏より地域の方と一緒に「能勢里山愛好会」という団体を立ち上げた。これは能勢農場にてよつ葉の職員の方々を対象に林業の研修を2年前より行ってきた。その研修の場である山の地主の方と一緒に行ってきたのだが、新たに団体を作ることで自然豊かな能勢の里山を活かしていけるような取り組みにしたいと考えている。最初の提案は地主の方から頂いたのだが、参加しているメンバーとの話し合いの中でそういう方向性を持たせて活動していこう、となった。
 
これは能勢農場として昨年より本格始動し始めた「よつばあかうしプロジェクト」を結び付けていくための大きな一歩になるとも考えている。10年程前に2頭のあかうしを高知県より導入し、隣接する山を開墾して、芝を定植し、あかうしを放牧する事でその山は自然の中での役割を果たすことができ、更に自然環境の維持にも繋がっている。
 
「あかうしプロジェクト」として昨年より繁殖牛からの一貫生産を始めているが、今の所は高知や兵庫、岡山の預託先への導入を進めていて、農場への繁殖牛は4頭を新たに導入したに過ぎない。これから少しずつ増やしていくのだが、そのための放牧地の確保はそんな簡単に出来るわけではなく、仮に確保したとしても管理されていない山を一から開墾するとなると自分達だけでは到底出来るようなことではない。
 
そのような時にこのような団体が立ち上がったことは大きな一歩になると思う。ただ、自分たちの事業のためだけの位置づけにしてしまうと一方的すぎるので、「能勢里山愛好会」のメンバーともじっくり話していきながら慌てずに進めて行きたいと考えている。
 
そのメンバーには地主の方親子の2名の他に京都ではあるが長年林業に携わっている講師や北摂ワーカーズ、オブザーバー的に毎回参加してくれている京滋産直の方など農場のメンバー2名も含めて毎月第1土曜日に作業をしている。月に1回となるとゆっくりのペースになってしまうが能勢農場の周りの山は所有者が沢山おり、そのような場所にいきなり放牧させてほしいと言ったところで簡単に許可してもらえる訳もなく、少しずつ取り組みを見て感じてもらえるようにしていきたい。
 
そして、このような団体ひいては人の集まりが出来ていることで沢山の方々が集まれるような活用の仕方も同時に考えていきたい。これについても愛好会のメンバーとも話し合いを持っていて、その1つとして夏の林間学校で子どもたちと普段作業している山で課外授業のような取り組みを予定している。
 
あかうしという牛を通して人と自然の調和みたいなことを漠然と考えてきたが牛が自然界の一部として生きていて、その自然を守ることができ、その中で仔を生み育てるという流れが里山を守るという人達との思いと繋がっていくような取り組みを時間が掛かっても作っていきたいと考えている。そこには様々な思いが集まってくるであろうし、そのように進めていきたいと思う。
 
最後になるが昨年導入した繁殖牛は全頭に種付けが完了している。この種付けという技術を現在能勢の天王というところで酪農をしてきた方から教えてもらっている。人工受精師の資格も取得することは予定しているが地域で同じ畜産を営んでいる方の協力はありがたいことでもある。昨年よりスタッフが2名寿退社し、もう1人友人と新たな事業に取り組んでいくという事で3名が退社した。そのような状況ではあるが沢山の方が関わっていただいていることで能勢農場は大阪や兵庫の現場も頑張れると思う。どこかの大統領のように自分の所の事ばかり考えていては絶対に上手くいかないと思う。

(能勢農場 道下 慎一)