遺伝子組み換え肥料の開発が進む
農水省はいま、化学肥料に代わる新たな肥料の開発を進めています。ウクライナ戦争や対中関係などの国際情勢のなかで、化学肥料の原料の輸入が途絶えたからです。化学肥料は窒素、リン酸、カリの3つから成り立っていますが、窒素の原料である尿素は37%を中国に依存、リン酸の原料のリン酸アンモニウムも90%を中国に依存してきました。2021年10月15日に突如、中国政府がこれらを全面輸出停止にしたのです。カリの原料の塩化カリは、26%をロシアとベラルーシに依存してきましたが、これも両国が全面輸出停止としたため、肥料価格が高騰、農家に大きな負担を強いることになりました。
政府は、この問題を技術的に克服しようとしています。新たな肥料として注目されているのが、遺伝子組み換え(GM)微生物肥料です。米国ではすでにその散布が始まっています。現在使われている肥料は、窒素を生み出す潜在能力を持つ微生物を遺伝子組み換えで改造して、その能力を引き出し強化したものです。
しかし、GM微生物の散布は危険性が大きいのです。風に乗って容易に拡散し、微生物同士が頻繁に遺伝子を交換するため、どのような危険な微生物が誕生するか分かりません。土壌の生態系はとても複雑であり、そこに住む微生物や昆虫などの生物に取り返しがつかない悪い影響が起きる可能性があります。しかも一度散布された微生物は、回収ができないのです。政府の政策には、なぜ有機肥料の推進が出てこないのでしょうか。
天笠啓祐さん
環境・食品ジャーナリスト。市民バイオテクノロジー情報室代表。「遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン」代表。日本消費者連盟顧問。