健康食品による“健康破壊”
小林製薬が製造している紅麹を用いたサプリメントを摂取した消費者の間で、多数の腎疾患が起き、入院した人も多数、死者がいたことも分かりました。このサプリメントは、機能性表示食品と呼ばれるものです。健康に良いことを売り物にしていますが、本当に健康に良いのか、安全性はどうかなど、公的なチェックがないまま、「健康に良い」旨を表示して販売できる食品です。
この機能性表示食品をもたらしたのは、安倍晋三首相(当時)が進めた経済政策「アベノミクス」です。この政策は健康・医療を柱の一つに据え、「健康食品の市場規模は1兆8000億円に達しているが、規制の網がかぶせてあるためこれを緩和すれば、さらに大きな市場になる」として、2015年にこの制度が施行されたのです。
健康被害をもたらした原因物質はまだ特定されていません。機能性成分のロバスタチン自体、副作用で腎障害をもたらすことが分かっています。微生物が作り出す想定外の微量成分も原因物質として疑われています。同社は、紅麹菌に強い紫外線を照射して生産性向上を図っており、それにより思いがけない有害成分が生じた可能性があります。いずれにしろ安全性よりも経済性を重視した姿勢がもたらした事件だといえそうです。
消費者の健康にとって必要なのは栄養バランスのよい、安全性を重視した食生活であり、健康食品は必要ありません。健康食品は消費者の健康の増進に役立つどころか、むしろ健康破壊につながりかねません。