水田が失われる
稲作の水田離れが進められています。農水省は今回のコメ騒動を利用して、農家を応援するのではなく、乾田と呼ばれる水を張らない田んぼでの大規模栽培と、植物工場での稲作を進めています。前者では、さっそく牛丼の松屋チェーンを運営している松屋フーズが、この7月にベンチャー企業などと組んで、乾田に直接、水稲用の種をまき、そのあとも灌水しないでコメ作りを行う、と発表しました。農水省も9月に「田植え不要の米づくりコンソーシアム」を開催し、マスメディアもこの方式を、持ち上げています。
一方、植物工場の基本は、施設の中での土を使わない水耕栽培、LEDを用いる人工的な光、温度や湿度、二酸化炭素の濃度を人工的に管理することです。安定的に、早く繰り返し栽培できますが、高額な設備を作るのに必要な費用と電気代などの経費がかかります。
稲は生育に多くの光を必要とし、生育期間が長く、丈も高くなり、食べる部分が少ないため、植物工場での栽培が難しいとされてきました。いまこの植物工場を用いた稲作が始まり、キニッシュ社(東京)は今年8月6日から植物工場で生産された稲を用いたアイスクリームの販売を開始しました。同社以外にも、背丈が低く、何段にも重ねて栽培でき、さらに2~3か月ごとに収穫できる稲が、さまざまな企業によって開発されています。
水田は、生物多様性の宝庫であり、地球環境問題で重要な働きを果たしてきました。しかも連作障害が起きないなど、稲作の基本でした。乾田や植物工場での栽培は、その機能を奪ってしまいます。
