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よつ葉ホームデリバリー

2023年12月号(152号)-2

 

 

水産を巡る挑戦

 

大阪中央卸売市場の仲卸として働いていた頃は、市場のセリ場にアジ、サバ、いわし、スルメイカ、サンマなどが多くて日に200tとセリ場いっぱいに並んでいましたが、今はセリ場に10分の1ほどしか入荷していません。それは「魚がいない」だけでなく、魚の消費量や漁業関係者の減少なども大きく関わっているのだろうと思います。
しかし一番の原因はやはり「魚がいない」ことだと思います。「魚がいない」のではなく、アジ、サバ、スルメイカ、サンマなどの「今まで売れていた魚」がいないのです。日本の魚で水揚げされているのは3000種類ともいわれております。そのなかのほんの一部の魚しか量販店や飲食店、食卓に並んでいないのです。そのほんの一部の魚はたくさん獲れて安価で、どんな料理にもしやすいからという理由で流通していました。そんな魚が減少してしまい、高級魚のような扱いになった今、産地の漁港に行くといまだに片隅に追いやられている魚も多く見受けられます。
「魚がいない」と言っているのに、漁港に行くと「魚」はたくさんいる。この状況に違和感がありました。隅に追いやられている魚は今まで何かの理由で流通せず、食卓に並んでこなかったのだから、その理由を知り解決することで、たくさんの種類の魚をおいしく食べてもらい漁業関係者に利益を還元できればと思っています。今現状で漁獲が減っている魚は禁漁することで解決できるのであれば、他においしく食べられる魚を食べて資源回復できたらとも考えております。海は本当に大きいです。その海を大きく、広く見てみると今までにない新たな発見や挑戦することがたくさん見えてきます。まだまだ水産業界も捨てたもんじゃないです! 

(九里貴彦)

 

■九里(大阪市此花区)■

よく知られている魚から、あまり知られていない魚まで、1匹1匹の魚を大切にすることを理念とした加工品を通して、海の環境や現在の魚の状況、海に出ていく漁師のこと、そして何より魚の価値をより多くの方に感じてもらいたい。大阪中央卸売場のそばから”ほんものの旬の魚”のおいしさを届けている。

 

 

誠心・誠意、原点に立ち戻る

 

 今年7月の大雨によって広範囲に発生した浸水被害。きりたんぽを製造しているタンポヤ林も会社工場裏の太平川が氾濫し、床上浸水の被害を受け復旧には3カ月以上の時間を要しました。大雨発生当時、過去にも雨による浸水があった際は水の高さが足首程度までだったので、排水ポンプで事足りるだろうと用意していたところ、あっという間に腰の高さまで水位が上がってきて驚きました。水のなかでの作業は想像を絶するもので、急いで商品在庫や資材機材を水に浸からないように棚の上に上げたりしていましたが、すぐに胸の高さまで水位は上昇。作業を断念し避難を余儀なくされました。翌日水が引き工場に戻ると、水没の跡がはっきりと残る状況に愕然とした気持ちは今でも忘れられません。
慣れない泥のなかの作業で滑って転んでしまう、泥の洗浄をしながら使えそうな道具の取捨選択も焦る気持ちから誤って多数捨ててしまうなど、心身ともに大変な思いをしながらの復旧作業でした。そんななかでも多くの取引先からお見舞いや温かいお言葉をいただき、大変勇気をもらったこと、その言葉に応えるべく誠心誠意、原点に立ち戻り、機材も新しく導入するなどゼロからのスタート同様の状況ではありますが、秋田名物「きりたんぽ」を広めていくことを使命とし頑張っていきたいです。
10月中旬から「新米あきたこまち」を使ったきりたんぽの販売を再開させるなど、一歩ずつ復興への歩みを進め始めました。わたしたちがつくる秋田伝統の味「きりたんぽ」、是非ご賞味ください。

(今野真一郎)

 

■タンポヤ林(秋田県秋田市)■

米どころで、米をおいしく食べるために生まれた「きりたんぽ」をつくって50年。7月の大雨による工場の浸水被害で中止していた「新米あきたこまち」を使ったきりたんぽの販売を再開させた。

 

 

ときどき、一筆

 

よつ葉の職員研修を迎えて

丹波ハピー農園  堀 悦雄

 

 夏の暑さも一息ついた9月30日、15名の職員さんをお迎えして丹波ハピー農園を見ていただきました。会員さんの元へ配達している配送をはじめ、農業者、商品企画、北摂協同農場、精米所の方も来られ、見て作業して、お話もさせていただきました。
数年前、荒れた里山が田畑を荒らす害獣の温床になっているのに困って導入した短角牛(よつ葉で紹介していただいた岩手県山形村から導入)が生い茂っていた笹を食べてくれて、数年で獣害がなくなった現状を見てもらった後、ほんの少しでしたが黒米田の稲刈りをしてもらいました。鎌を持ってサクサクと稲を刈っていくのは気持ち好く、刈った稲束の穂の重さで稔(みのり)を実感でき、振り向くと景色が変わり仕事の結果が見えて楽しんでもらえたのではないかと思います。(一日中手刈りすると腰は痛く、つらい仕事ですが)
お昼にはお弁当を食べながら、しばらくお話をさせていただきました。日頃農作業をしながら考えたり、思いつくことをいろいろ話したのですが、話があっちこっちに飛んで、とりとめのない話し方になってしまいました。しかし私が日頃から心掛けている、肥料の力ではなく、土の持つ力で作物を健康に育て、その恵みを感謝していただくことやそのためには見える地上部だけではなく土のなかで働く植物の根や微生物、ミミズなどの小動物の働きや通過して行く水や空気(水に含まれる不純物が命のエレルギーになり、根が呼吸して酸欠になった地中の空気を水が交換してくれること)について少しはご理解いただけたのではないかと思います。
百姓をしていますと、良かれと思った働きかけが実は作物を苦しめていることがあるのだということを最近、時々感じるようになりました。たとえば機械を使って耕すこと、作物以外の生き物をやっつけること、自分の思い込みで水やりすること等々。もちろん必要なことの方が多いのですが、妨害していることがあることも…。今回の研修で生命の糧が生まれてくる農の現場を見て、感じていただけたら何よりも嬉しいです。ありがとうございました。

                     


研修メンバーとの集合写真 

研修メンバーとの集合写真