2024年3月号(155号)-1
原発依存社会からの脱却
全国に拡がる 反原発運動をつなぐ
関西電力は昨年末までに使用済み核燃料の中間貯蔵施設の県外候補を明示できなければ福井の老朽原発を止めると約束していました。稼働を強行するために関西電力と中国電力は山口県上関町に中間貯蔵施設の立地計画を打ち出しました。青森県六ケ所村には中間貯蔵施設が稼働しており、北海道寿都町では最終処分場の誘致に関する議論が続いています。各地の運動の連携が必須となってきています。今号は1面で関西、3面・4面では福島の現在を紹介していただきました。
福井ー原発延命につながる中間貯蔵、乾式貯蔵
原発設置反対小浜市民の会/明通寺住職 中嶌哲演
能登半島地震・津波の過酷な災禍が伝えつづけられているにもかかわらず、われ関せずの関西電力は福井県に対して、2月8日に使用済み核燃料の「乾式貯蔵(注)の事前了解願い」を申し入れました。それを受けて2月13日に開会された県議会が、あれこれの条件を付しつつ拙速(せっそく)に承認しかねない動向を憂慮して、また原発延命につながる事前了解を危惧して、県内外からの反対の請願、陳情が相次いでいます。
そもそも昨年末までに「中間貯蔵施設の県外候補地を明示できなければ、美浜3号機、高浜1・2号機の老朽原発を止める」という関電と福井県の約束が交わされていたのですが、それを反故にしての申し入れです。同施設を2度(2004年と2008年)も退けた小浜市民は県外搬出を無条件に認めているわけではありません。青森県や山口県の上関町に押しつけるなど、言語道断。自他の地域ともにそれを押し付け合わないためには、原発を止め、使用済み核燃料を増やさないことでしょう。上記の老朽原発停止を求める仮処分を巡る決定が、福井地裁と大阪高裁で3月中に出る予定です。
杉本知事は乾式貯蔵「事前了解」の可否判断については、「地元自治体や県議会などの意向を踏まえて」という常套句を口にするばかりです。この原発立地市町や立地県の議会と首長の「同意」という枠組みのなかだけで、半世紀余りに及ぶ原子力ムラの行政は暴走してきたように思います。つい先年の老朽原発稼働も、一見慎重な姿勢を示していた福井県議会や知事が、国から50億円の交付金が提示された途端、それに同意したことを想起せざるをえません。
老朽原発の再稼働、使用済み核燃料の中間貯蔵施設や乾式貯蔵、これらの原発延命策は決して地元や周辺だけの問題ではありません。原発電力を大量に消費してきた広範な都市圏の皆さんとともに、今こそ原発依存社会から脱却していきたいものです。
(注)…使用済み核燃料を輸送・貯蔵兼用キャスクと呼ばれる容器に密封収納する方式で、中間貯蔵施設への円滑な搬出が前提とされる。
10/22「老朽原発うごかすな!」関電本店前の集会でスピーチする中嶌哲演さん
世代交代に奮闘中!
バイバイ原発きょうと/安全食品流通センター 吉永剛志
新しくできた亀岡の物流センターで毎日、仕分けをしています。
京都には70年代から積極的に脱原発活動を担ってきた方がいます。映画『MINAMATA』に出てくるアイリーン・美緒子・スミスさん、有機農家の佐伯昌和さん、日本で初めて農薬裁判を京大助手時代に起こした石田紀郎さん等々…。無論、皆さん「バイバイ原発きょうと」の呼びかけ人です。学ぶことが多い。しかしいつまでも頼ることはできません。私たちがやらなくてはいけない。とはいえ時代状況は違います。
かつて男性の「終身雇用」と女性の「専業主婦」がありました。石田さんによると、80年代初頭、京都市美術館で丸木位里「原爆の図」展を市民の力で開催したとき、協力したいという30代~40代の女性が「湧いて現れて」きたそうです。時間に余裕があり、何かやりたいという女性がそれなりにいたのでしょう。しかし今、女性の雇用のM字カーブ(結婚や出産で働かない時期)はなくなり、みんな働いています。「市民活動」も働き盛りは層が薄く、ままなりません。
若い世代はどうでしょう。大学生も昔と違い、授業は義務で出席はきちんと取られるし、忙しい。自分のやりたいことをやる自由時間はそれほどない。それに原発事故のとき、まだ小学生になるくらいの彼らの多くは、原発に関心が薄い。なぜ脱原発なのかもわからない。それでも気候危機に反応してスタンディングアピールをしている若者たちが少数ながらいます。そういう人たちとともにやっていこうと1月18日にはプレイベントとして大学生有志で意見交流会を京都大学で開きました。参加した大学生たちは、感動的なスピーチをしてくれました。そういう力をもっと押し広げていきたい。
ポスター、チラシは人気の絵本作家tupera tuperaさんに書いてもらいました(写真)。シニアだけではなく、若い方はもちろん、小中学生や高校生にもパッと届くチラシになりました。愚痴を言っていても始まらない。犬も歩けば棒に当たる。空振りを恐れず、動いていかなくてはいけません。
京都在住の絵本作家tuperatuperaさんのイラストのチラシ
「よつ葉ステーション」の拡がり