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よつ葉ホームデリバリー

2024年9月号(161号)-1

地域漁業の活性化のために

 

トラウトサーモン養殖の新たな取り扱い

 

 

 

 魚が以前のように捕れなくなっている。漁獲量が減っているだけでなく、揚がる時期が変わってきていたり、今まで捕れていた魚が揚がらなくなり、逆に揚がらなかった魚が揚がるようになったという話をよく耳にするようになりました。原因としては乱獲や気候変動などの海水温上昇などが言われています。三陸では主要な秋鮭・サンマの水揚げが極端に減っており、水産業にとっては大きな打撃となっています。そのような各地の水産状況を踏まえ、昨年8月に水産生産者意見交換会をしました(本紙2023年10月号〈関西よつ葉連絡会HP〉に掲載)。養殖についても話題に上がり、検討を進めてきました。水産生産者意見交換会をへて1年、養殖魚の取り扱いに関するご協力のお願いです。

 

 

 

丸友しまかの島香友一さん(右)と会長の尚さん夫妻

 

 

 

宮古漁協の取り組みを支える

 

ひこばえ 福井 浩

 


昨年8月の全国の水産生産者20社が集まっての意見交換の場から約1年。よつ葉は「養殖魚も取り扱う」という新たな決断をしました。
1年前に生産者と確認したことは、これまでよつ葉が培ってきた水産生産者との信頼関係やネットワークを大切にしつつ、よつ葉も生産者も発想を柔軟にすること。その上で、水産生産者間の互いの情報交換や協力を強めること。そして、養殖魚の取扱いも視野に入れること、でした。これに基づき、商品企画を担う「ひこばえ」では養殖魚についての学習会、養殖の現場の見学、そして内部および生産者との意見交換を積み重ねるなどして、検討を進めてきました。
よつ葉がこれまで各地の漁港で捕れた魚(前浜の魚)を各地の顔の見える生産者から届けてもらうことにこだわってきたのは、それが何より「新鮮で」「おいしくて」「安心できる」からでした。と同時に、よつ葉が各地域の生産者とつながることで、その生産者を支え、さらには地域の漁港・漁村の活性化に少しでも寄与したいと考えてきました。
ところが、漁港・漁村をめぐる状況は、ますます厳しさを増しています。全国の漁師さんの人数は2022年には約12万人。1988年の約39万人数から3分の1にまで減少してしまいました。これは全国の漁港・漁村、そして漁師さんたちが経済的にやっていけない状況にあることの結果です。

 

 

 

漁獲量の激減の対応策として

 


そんななか、「世界有数の漁場」として有名な三陸沿岸でサンマ・秋鮭などの漁獲量の激減への対応策として、養殖事業が相次いで始まっています。丸友しまかさんがある岩手県の宮古でも宮古漁協としてトラウトサーモンの養殖事業が始まり、取扱いについて打診がありました。そこで今回、私たちも現場を見学させてもらいましたが、①養殖いけすが設置されているのが流れの速い場所であるため、養殖魚の運動環境は一定程度確保されていること、②流れが速いことと合わせて、飼料の形状が水面に浮かぶタイプなので、養殖いけすの底に飼料が溜まることはなく、水質汚染の問題はなさそうであること、③飼料自体についても、原材料名を見る限り薬剤(抗菌剤等)は直接は使われていないこと、が確認できました。なお、いくつかの項目についてさらなる情報開示を求めています。
これらを踏まえ、今回、よつ葉として宮古漁協が養殖したトラウトサーモンを丸友しまかさんを通じて取り扱うことにしました。その何よりの根拠と目的は宮古漁協が漁師さんと漁港を守ろうと取り組んでいることに賛同し、その取り組みを支えることにあります。
私たちは養殖魚が、現在の漁業を巡るさまざまな問題を全て解決できるとは考えていません。むしろ、養殖魚は補助的な役割を果たすのみだと考えます。しかし、漁業を巡る厳しい状況は簡単に解決できるものではなく、長期にわたることを覚悟しなければなりません。そして農村と同様に、漁港や漁村は失われてしまえば、その地の人々の営みも失われ、取り戻すことはほとんど不可能です。だからこそ都会に住む私たちは、これらを守るためにできるだけの協力をしたいと考えます。
今回の私たちの決断について、いろいろな疑問やご意見があると思います。ぜひ率直にお聞かせいただい
て、一緒に考えていきたいと思います。

 

 

生産者より - 水揚げのある魚で何ができるか?

 

 

丸友しまか 島香友一

 

   

 ここ数年、三陸産の秋鮭は不漁が続いています。漁獲が多いときで2万本/日あった秋鮭も、今では数10本~100本前後と低調になっています。そんな環境のなかで、秋鮭の補完を目的とし、岩手沿岸各地では養殖が盛んになっています。岩手県久慈市では「久慈育ち琥珀サーモン(銀鮭)」、地元宮古市では、「宮古トラウトサーモン」、山田町では「トラウトサーモン」、釜石市で「サクラマス」、大船渡では「トラウトサーモン」があり、天然魚に頼らず、〈作り育てる〉にシフトしてきております。
宮古湾の特徴として、湾口が北東を向いており、北からの潮流が流れやすい環境にあります。「宮古トラウトサーモン」は、その潮流が早く、海底から伏流水が沸いている海域で養殖されています。給餌は日に1回、浮遊性のある飼料をあげており、環境にも配慮しています。
こうした環境のなかで、丸友しまかとしても「魚が捕れない」ではなく、「水揚げのある魚で何ができるか?」に重点を置き、日々商品開発に取り組んでいます。そのため、安定供給のある「宮古トラウトサーモン」は貴重な原材料の一つです。このトラウトサーモンを活用し、味噌漬けや粕漬け、お刺身や切身(生、塩)、燻製、へしこなどを製造しています。

 

 

宮古トラウトサーモン

 

 

 

 

地域漁業の活性化のために
トラウトサーモン養殖の新たな取り扱い