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よつ葉ホームデリバリー

2024年10月号(162号)-2

 

 

アレッポ工場は完全復活

 

■アレッポの石鹸(シリア・アレッポ市)■

1994年創業。シリアの古都アレッポで1000年以上前からシンプルな材料でつくられてきた、人の肌に優しい石鹸を日本各地に広めている。内戦によりアレッポ市の工場は大破、再建した工場をトルコ・シリア大地震が襲うなどの苦難があったなか、アレッポの工場は再稼働を始めた。

 

再建した石鹸工場

 

  「アレッポの石鹸」は内戦の影響から一時出荷を調整するなど皆さまに大変なご迷惑とご心配をおかけしてまいりましたが、アデル・ファンサ社の石鹸工場が再びアレッポ市で稼働し、この度その石鹸が無事に入荷しました。シリアで2011年から内戦が始まり、翌年よりインフラの破壊から製造不能となり、先行きの不透明さから出荷調整を行いました。2013年にはIS(イスラム国)がシリア国内で活動し輸送も困難な状況となります。ファンサ社は熟慮の末、2014年、石鹸工場を同国の港湾都市ラタキア市へ移転、製造を再開しました。
ラタキアは貿易港でもあり、生産・輸出ともに以降、安定して行うことができるようになります。古巣のアレッポ市は2016年頃、史上最大の悲劇と評されるほどの戦闘状態となり、工場一帯も大規模な爆撃を受け、大破しました。
2018年頃からシリア内戦は膠着状態となり、それ以前のような大規模な戦闘や爆撃は減少していきます。アデル・ファンサ社は2020年頃からアレッポの工場の修復を始め、翌年4月試運転を開始。11月からは石鹸の生産が再開されます。ところが2023年2月にトルコ・シリア大地震が発生。アレッポの石鹸工場は壁にヒビが入る程度の被害で済みましたが、家が倒壊して帰れなくなった従業員も少なくありませんでした。
そのような被害も乗り越え、今年7月にやっとラタキアの工場を引き払い、アレッポ市の石鹸工場での生産が完全に復活しております。皆さまのご支援のおかげでなんとか乗り越えてまいりました。生産量も内戦前に戻っております。どうか今後ともアレッポの石鹸をよろしくお願い申し上げます。 

(太田昌興)

 

 

 

 

 

ここにしかない城州白を守る

 

青谷梅工房(京都府城陽市)■

 

青谷梅工房の田中さんは2011年に後継者不足に悩まされる梅の生産者になりました。その他にも地域のために青谷の梅まつりや梅酒バー、梅加工のワークショップなど忙しくしています。

お店:京都府城陽市中出73-5

竪穴式住居の前で

 

 

  私は元小学校の教員です。そして、「城陽生きもの調査隊」という生きものを調べながら自然環境を守る活動をしていました。すると、そうした活動に活かすようにと、青谷の方が山の一部を貸してくださいました。全くの竹藪でしたが、そこを切り開いて平地にし、ついには竪穴式住居も建て「くぬぎ村」という活動拠点をつくりました。そこがちょうど青谷梅林のなかにありました。ここはかつては広大で明治の中頃、地元の努力によって全国的に知られた観光梅林になったところです。また、ここで育つ「城州白(じょうしゅうはく)」という梅は大粒で香りが良く、おいしい珍しい種類の梅です。
しかし、後継者不足で梅林はどんどん縮小していました。この青谷の農家が辞めてしまったら「城州白」という梅はなくなってしまう、と危機感を持った人たちが梅を守る活動をしていました。私も青谷の梅まつりを応援して、子どもを中心にした「くぬぎ村梅まつり」を開いたり、空き家を借りて、観梅客をもてなす喫茶店兼お土産屋を始めたりしました。
ただ結局、ここの梅がもっと活用され、農家がもっと続けやすくならないと駄目だろうと、教員を辞めて青谷梅工房を始めました。放置された梅林を借りて世話をし、梅干しや梅ジャムなどの加工品をつくり、販売を始めました。商売のことも農業のこともよく知らないまま始めた事業は大変困難でした。それでも、「ここにしかない城州白を守る」ことの意義は、伝わりやすく大きな力になりました。城州白を育てようとする会社も出てきました。しかし、農家の減少はなかなか止まりません。梅を育てる人のつながりや文化が消えないように何ができるだろうかと悩んでいます。   

(田中昭夫)

 

 

   

 

 

 

 

わたしのおススメ

 

『持続可能な暮らしびとになりたい』

松原小夜子著

大久保 亨(高槻生協)

 

  持続可能な暮らしを続けるために著者が実践を続ける物事について詳しく綴ったものです。帯に「食、住、衣、…」とあるようにそのなかでも最も大きな比重を占めているのが食に関することです。何をどのように食するのか、まずは1日1食に驚かされます。歴史的に見ても朝昼晩の3食になったのはごく最近のことで、人は従来おおむね2食で暮らしてきたことが記されています。日本の食糧自給を鑑み地産地消の立場をとり、無理に多くの食材を集める必要はない。
ただ栽培法にはこだわるべきで、例えば単に有機礼賛ではなく日本のJAS有機は一部の農薬を許容していることなど押さえるべき点をはっきりと示してくれています。これは私たち「よつ葉」でも実践してきたことであり、とても励まされます。食べ方についてもご本人の実践を通じて身体に負担のかからない食べ方が紹介されています。私たち凡人がまねをするのは難しいことかもしれませんが、まずは知ること、そして納得できる部分だけでよいので少しずつ実践してみることが大切なのではないでしょうか。食材を食べきる、捨てる部分を最初から出さないなどの行動は、環境保護の観点からみても説得力のあるお話です。
住生活については、さまざまな見方があると思いますが、空調機器の利用を最小限に抑えて、なおかつ自身の快適さを追求されています。著者の場合は家を建てるところから始まるので、もう建て(買っ)てしまった人や不動産を所有することに抵抗のある人などには馴染まないかもしれません。しかしながら、住生活における快適さとは何か、それを支えるためにどのような建築物が向いているのかなど、単に好みの問題ではなく燃料消費や建材消費にまで話は及びます。そして現在のわが国においてこのような選択も可能であり、それがまた持続可能につながるのだと語りかけています。

*高槻生協の組合員さんから著書の贈呈をいただきました。今回は配達をしている高槻生協の職員から紹介をしてもらいました。