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よつ葉ホームデリバリー

2024年11月号(163号)-2

 

 

国内自給率向上が最優先!

 

■くまもと有機の会(熊本県御船町)■

1975年に無農薬野菜の産地直送をスタートさせ、翌年、前身である「熊本有機農産流通センター」を設立。生産者と消費者をつなぐ活動をへて1985年に「くまもと有機の会」として改めてスタートし、今に至ります。

 

お子さんと筍の収穫

 


いつも当会の農産物を食べていただきありがとうございます。今年は農家にとって、とてもとても厳しい気候が続いています。3、4月の大雨から始まり、夏の猛暑に干ばつと想像を超えてくる異常気象です。ベテラン生産者も「40年農業ばしとるばってん、こがん年はなか」と言うほどです。ごぼうや里芋など、どちらかというと安定的な作物も大凶作で、会員の皆さまにはご迷惑をおかけして申し訳ございません。
 
もう一つ農業関係者として心配なことがあります。今年の6月に施行された食料供給困難事態対策法です。気候危機や世界政治の情勢に伴う食糧や生活資材の調達リスクの高まりなどを理由に、政府は基本法改正を行うとともに、不測時のための法律を作りました。同法では事態によって、政府が食料供給困難と判断した場合、農業者に生産転換を求め、稲・麦・大豆など特定食料をつくらせ、従わない場合には罰則があります。
 
ここで、「あれっ」と思うのが戦後の食糧難をきっかけに制定された主食である米・麦・大豆を国で守っていく種子法を2018年にあっさりと廃止したことです。半導体や車などの工業製品も必要と思いますが、先進国で最低の38%という国内自給率を上げることの方が最優先ではないでしょうか。「食」の根源である農業を守ることが未来につながることだと思います。当会でも高齢化が進み生産者も減っています、興味がある人がいれば全力で応援していき、生産者が「農業を選んで良かった」と思えるような社会にしていきたいです。これからもおいしくて元気の出る野菜をつくりつづけていきますので、応援よろしくお願いいたします。

(手嶋大吾)

 

 

 

 

 

支援型ドリップバッグ

 

珈琲の富田屋(奈良県橿原市)■

 

元々、古民家や古い街並みが好きだったという洲脇さんの焙煎所は蔵を改装した素敵な場所です。産地にも足を運び、農園や豆の状況を確かめ、1粒1粒を見極めて選別し手間をかけて焙煎しています。

お店:奈良県橿原市今井町1―10―17

 

洲脇さんご夫妻(焙煎所のある蔵の前で)

 

 

 珈琲の富田屋は奈良県橿原市今井町、重要伝統的建造物群保存地区にあります。この地域には500軒以上の古民家が存在し、うち9軒が国指定の重要文化財に指定されています。そのうち6軒は実際に住んでおられます。富田屋が今井町に移転して10年、その間に重要文化財に住む方々と交流する機会がありました。最大の課題は改修費用です。通常の家の改修であれば予算に応じた材料や工法が選べますが、国指定の重要文化財は伝統的な材料と工法に基づく必要があります。例えば土壁には竹を編んだ竹小舞を用いて何年かかけて壁下地をつくり、屋根は本瓦を使用します。釘ひとつとっても、和釘という鍛冶技術でつくられるなど、特別な工程を要します。
 
国からの補助金が2分の1、市からの補助金が4分の1出るものの、改修費自体が高額であり、頻繁に改修が必要な古い家では負担が大きいです。また住環境も断熱性や気密性が低いため、冬は暖房費がかさみます。収入は見学料の300円~500円程度です。特に退職後の住人には大きな経済的負担がのしかかり、改修費を工面するのが難しくなっています。家を継ぐものがいなければ、他人に渡る可能性があり、転売目的で購入された場合、買い手がつくまで適切な管理がされずに古民家が荒れてしまう懸念もあります。
 
富田屋は社会課題を解決したいと常に思っています。こうした状況を防ぎたく、まず音村家住宅を支援するために、1個250円のドリップバッグ(うち50円寄付)を販売開始しました。ドリップバッグを販売してくださるお店も、大募集中。
〈余談ですが、香害、化学物質過敏症に関しても取り組み中〉

(洲脇大輔)

 

 

   

 

 

 

 

ちょっと寄ってみ。

 

ちょっとでも希望が増えるように

畑の子ども食堂

 

 高槻市の西真上地区で「畑の子ども食堂」をスタートしてもうすぐ1年になります。毎月2回、近隣の参加家族と市内外に住むボランティアスタッフが集まります。午後からスタッフが準備をし、夕方に若い家族が集まり、食事をして、本やおもちゃで遊び、参加者は帰る前に一緒に片づけもします。毎回、わずか1時間半の開店時間は、総勢40名を越える人々の熱気にあふれます。
代表者は3年前から北摂・高槻生協の農業事業部に畑を借り、よつば農産への野菜の出荷を始めましたが、そのなかで相当な余剰野菜が出てしまうことに気づきました。流通規格に合わないだけで売れ残り、最後は廃棄せざるを得ません。こうした仕組みを少しでも改善できないかと考え、「もったいない野菜」を使ったご飯を子どもたちに提供する「畑の子ども食堂」にたどりつきました。
 
材料は主に北摂・高槻生協農業事業部に提供してもらう野菜、ご飯は皆さんからいただいた寄付のお米です。子どもたちが野菜をたくさん食べるのでお母さんたちは驚いています。しかし、子どもも保護者も自分がここで食べている野菜のことをほとんど知りません。そこでスタッフの発案で、毎回下ごしらえ前の野菜の写真を撮り「きょうのおやさいなーに?」というクイズ壁新聞をつくって「畑・野菜」について知らせています。
 
それ以外はまったくの自由スペース。これが「畑の子ども食堂」の特色です。「普段の食事が困難」である事情の理由には、今の社会では金銭的問題だけではなく、家族が共に過ごす時間、場所が取れないということが大きな割合を占めています。開催を重ねるうちに、そのことが当初の想像以上であることが分かってきました。参加者の皆さんは、次第に会場で自由に過ごすようになり、緊張感もほぐれて他の知らない家族やスタッフとも会話を始め、お父さんも仕事帰りに来場したり、子どもと会話やゲームで楽しみます。
 
参加者全員に食後の食器洗いや片づけをお願いしていますが、皆さん積極的に協力してくれています。やはりこの食堂の「必要性」を強く感じているからでしょう。提供する側と提供される側との境目が次第に薄れてゆくように思います。これまで感染症拡大防止、食品衛生上の問題、小さい子どもたちの安全確保など次々に課題が現われ、試行錯誤を重ねながら改善を行ってきました。会うたびに大きくなり、心を開いていく子どもたち。「手伝わせてください」と食器洗いや片づけをしてくれる保護者の皆さん。働きもので心優しいボランティアスタッフたちに支えられて「畑の子ども食堂」は成長を続けています。この人たちが生きていく世界にちょっとでも希望が増えるように、できることを続けていきたいと思います。

(高槻生協会員 小泉 圭)