2024年11月号(163号)-4
「水俣・京都展」知らないことを知る日々になる
京阪産直会員 森垣郁江
12月7日から22日の16日間にわたり、「みやこめっせ(京都市勧業館)」にて「水俣・京都展」が開催されます。6月より月1回、その準備を進めるサポーター会議が行われており、私も参加しています。会議のメンバーは主催団体である「水俣フォーラム」の皆さんと50人ほどのサポーター。会議では水俣病患者の方のお話を直接聞く貴重な機会もあり、またサポーターの皆さんのそれぞれの水俣との関わりや想いに触れる度に、私のなかでどんどんと水俣が広がっていくように感じています。
2011年、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故が発生しました。原発が事故を起こしたときの悲惨さと政府や電力会社のあり方にがくぜんとし、二度と原発事故が起こらないようにと脱原発の活動に関わっていた私は、ある時、写真ジャーナリストとして水俣病を世界に発信し、また環境活動家として反原発に取り組まれているアイリーン・美緒子・スミスさんの「福島と水俣の問題は同じだ」という言葉に、またもやがくぜんとしたのです。「どういうことだろう?」
その後、水俣を訪れる機会がありました。とても穏やかな海を見て、今もなおそこにあるチッソ(現JNC)の工場前へ行き、患者の方々に出会い、水俣病センター相思社でお話をうかがい、水俣病が終わっていないことを知りました。国や企業が責任を取らず、最も立場の弱い人たちが大きな苦しみを受け続けている、この構造は現在も繰り返されています。私にはまだ知らないことがたくさんあります。それを知っていくことが、さらなる水俣や福島を生みださないための最初の一歩だと思います。「水俣・京都展」はそんな知らないことを知る日々になる、と今からとても待ち遠しいです。
(下記「INFORMATION」欄参照)
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会期:12月7日(土)~22日(日)
時間:9:30~17:00
会場:京都市勧業館みやこめっせ
(京都市左京区岡崎成勝寺町9番地1)
京都市営地下鉄東西線「東山駅」より徒歩約8分
市バス「岡崎公園 美術館・平安神宮前」など
3回連載-里山に「本のある場所」の灯をともす②
TOGO BOOKS nomadik 大谷政弘
勇ましく出発した私たちだったが、実を言うと(というか言われなくても、ご賢察の通り)本はあまり売れていない。あまり動かないだろうと腹をくくっていたものの、こんなに動かないと笑うしかない。人々は里山の時間に自然を求め、しばし文字情報や記号から解放される憩いを求める。地元の人間は生業(なりわい)と野良仕事に忙しく、比較的本を手にする人も本のある空間でゆっくり読書という暇はない(当の私がそうだ)。というわけで、今私は本を売ることもそこそこにピーマンを刻み、米を研ぎながらハン・ガンの読書会をしたいな…などと考えている、二足の草鞋もいいところの人間である。
ただ、私はいわゆる「街の本屋」と同じことをしたいと思ったわけでもないし、また実際に求められているわけでもない。全国各地で起こっていることだが、今の時代にこれまでと同じような商習慣で運営されている「リアル書店」は必ず疲弊し駆逐される。そこで「本屋」を愛する人は、本を「かけがえない場所」に再配置し、「本屋」の意味を再解釈する。それは私設図書館であったりブックスタンドや読書会だったりする。私たちは「本のある場所」を放棄できない。そんな取り組みが北摂辺境の里山で起きた。この灯火が「TOGO BOOKS nomadik」である。
旅に出た先の滞在地、あるいはこれから暮らそうという町で、官公庁や食料品店など生活インフラを支える場所を一通り確認し終えたなら、あなたは次にどこを訪ねるだろう。私の場合は「本のある場所」。書店、図書館、本のあるカフェ。
それは、住む町や地域に死活的に必要なオアシスでありアジール(逃げ場)だ。それは、そこがどんな土地なのか、直接的にあるいは間接的に物語る。本は売れるに越したことはないが、必須ではない。暮らしていくと決めた能勢に「本のある場所」をつくり、根づき、開かれることを願ったとき、それは「食とあり合う場所」となった。
〒563-0133
大阪府豊能郡能勢町野間稲地433-2
営業日:水木金土 10:00~16:00
TEL : 072-743-0290
編集委員からの一言
9月中旬、亀岡市篠町にある新物流センターにヤギたちがやってきました。「やぎミルク」でお馴染み、南丹市園部町にあるるり渓やぎ農園で生まれた雄の子ヤギ10頭です。彼らの使命はセンターののり面に生い茂った雑草を食べることです。
犬によく噛まれる私は、柵越しに草を食べさせるのがやっとですが、ヤギたちが連れ立って草を食べる姿はかわいらしく、ココで働く人たちの癒しになっているようです。当初は隣の公園に遊びに来た子どもたちや散歩がてらの親子が見に来ていて、物流センター周辺が和やかな空気に包まれていました。一方で毎日の掃除やお世話は本当に大変な様子です。
時には、夢中で草を食べ進んでいるうちに柵の外に出てしまう子や生存競争(?)で少しやせ細っていく子がいたり、リーダー争い(?)による頭突で頭部にケガを負うなど、アクシデントもありましたが、ヤギの大脱走や大きな事故もなく約1カ月がたちました。
さてのり面の雑草は? というと、随分減ったように感じられます。けれど、好きな草と嫌いな草があるようで、黄色いキリンソウとススキのような雑草は残されています。寒くなるとるり渓やぎ農園に戻っていくヤギたち。いなくなるとちょっと寂しいですね。
(よつば農産 上山美奈)