2024年12月号(164号)-4
講座「ガザの声を伝えて―パレスチナ駐在員が語る10.7から1年」を開催して
高槻生協組合員 保田知奈美(パレスチナの子どもを守る会)
「わたしたちはガザで何が起きているのかライブ配信で見ていながらも、止めることができなかった」。登壇されたPARCICさんの報告者の言葉です。こんなにも悔しく、苦しいことがあるでしょうか。止めなければまた新たな死者が出ることが分かっているのに、止めることができず、毎日毎日人が殺されていく。子どもも赤ちゃんも。タイムラインにその映像が届く。諦めずに声を上げる。でも虐殺は止まらない。1年間その繰り返しでした。
「3.5%の法則」をご存じですか? ある社会課題において、人口の3.5%の人たちが積極的に動くと課題を解決できるという研究結果があるそうです。1000人中たった35人。なのにまだ達成できていない。それどころかもうすでに動いている人たちが、疲弊してボロボロになっている。
そりゃそうだ。毎日悲惨な映像を目にして傷つき、街頭に立っては目をそらされ、時には嘲笑や罵倒を浴び、貯金は寄付に消えていくのだから。何もかもが足りていない。人、お金、時間、そして何より市民の怒り。人が人を殺すということの異常さに気がついていない。子どもを殺し、赤ちゃんの家族を奪い、病院や学校を破壊し、救急車を爆撃する。日本を含む世界の多くはそれを無視するどころか、イスラエルを支援し虐殺に加担している。どう考えても異常だ。
報告者はこうも仰っていました。「ガザの人たちはネットがつながっている限り、各国がどういう協議をしているか、などを知りながら戦場にいる」。そう、ガザの人たちはこちらを見ています。国家レベルだけじゃなく、個人としても。わたしにはDMでSOSが届きます。「Please help me」「Don’t forget me please」「Please reply」。メディアが機能しないので、個人が命懸けで撮った虐殺の映像が届き、DMではSOSが送られてくる。遠い国の話ではなく、スマホの向こう側の話なのです。お互いに。
どこまで関わるかはそれぞれですが、せめてもう一歩踏み出していただけませんか。仮に3.5%を達成し社会を変えられたとしても、その3.5%の人たちがボロボロになっている状態は果たして良いのかと疑問に思うのです。それよりも35%の人たちが少しずつ力を出し合って社会を変えた方が良いに決まっている。イスラエル産のものを買わない、イスラエル支援企業をボイコットする、寄付をする、情報を拡める、そしてパレスチナについて話しつづける。できることはたくさんあります。どうかあなたの1人分の力を分けてください。
3回連載-地場の知とナラティヴを育む
TOGO BOOKS nomadik 大谷政弘
場を開いていると、思わぬ何かが飛び込んできて、出逢いやつながりを生むことがある。医療人類学者の松嶋健さんとの出逢いも、巡りめぐって、歴史学者の藤原辰史さんをブックトークにお招きしたご縁から始まったのだった。恵文社一条寺店で行われた、建築家の正田智樹さんの『フードスケープ』刊行記念イベントにて、私たちは初めて松嶋さんとお会いした。そしてそのとき初めて、関西よつ葉連絡会でもイタリアの現地生産者たちを日本の消費者に紹介してきたことを、「テリトーリオ」(注)という考えとともに知った。
宗教的ないし経済社会史的な違いはあれど、市民としての自覚とヒューマニズムがリアルに備わった郷土観は、私たちの周りを見るとやはり、彼我(ひが)の差を感じずにはいられない。しかし、遙かイタリアに共鳴と憧憬を感じながらも、「食という生きるベースを軸としながら、文化や技術をその土地に暮らす人々のもとで培い、そのナラティブ(語り)を伝えていく」という長期的なビジョンをもって、私たちはこの足元から始めなくてはならないということを改めて感じる機会と出逢いだった。
そんな私たちは今のところ、カフェやお弁当、近くの助産院へのケータリングなどをしながら、飲食業周り以外のイベントを定期的に行っている。子どもの料理教室「子どもと学びの日」、季節の仕込みものや手仕事をシェアする「暮らすかいほう日」。そして今年に入って始めた書籍イベント「TOGO BOOK night」。その他にグループをつくって無農薬でお米づくり体験をしたり、醤油づくりをしたり。正直なところ、もう「何屋」とは言えない感じなのだが、そういうわけで私たちは「本と食のあり合う場所」を自称している。 在野の知恵と文化、そして対話と私たちの言葉を、この中山間地から発信していくことを使命として。
(終わり)
(注)…都市と農村の新しい結びつきを生む社会システム
風、土、本。動くもの。動じぬもの。
通り過ぎるもの。過ぎゆかぬもの。
TOGO BOOKS nomadikは〈本と食のあり合う場所〉。
編集委員からの一言
今年の米騒動で玄米の価格が昨年よりも高くなっています。騒動となったお米は昨年穫れた2023年産米。農水省発表の作況指数は平年並みでしたが、現場では収量が少ないという農家さんの声も多かったので、現状とはかなり乖離しているように思います。
その作況指数から判断したのか、「民間に在庫はあり、備蓄米の放出が必要な状況ではない」と農水大臣が発言。その後も店頭にお米が並ぶことはほとんどなく、私たち国民は困ることに。さらに「価格はやがて落ち着くものとみております」という発言にも期待を裏切られた人も多かったのではないでしょうか。有名な映画のセリフで、「事件は会議室で起きてるんじゃない! 現場で起きてるんだ!」のシーンが思い出されます。
現在の米の価格は地域差や栽培条件、栽培方法や規模の大小の差はあるものの、再生産可能な価格に近づいていると私はみています。生産調整(減反政策)を進め、価格を操作しているのは農水省や農協なので、果たしてそれらも本当に正しいのか、私たち自身で見極めることが求められているのではないでしょうか。米農家が地域で農業を続けられる環境をどうつくるのか、この視点に立って考えてほしいと思います。
(よつば農産 横井隆之)