2024年2月号(154号)-4
北陸新幹線延伸計画について
北近畿産直会員 曽 美恵
今、小浜から美山、京北を経由して京都の地下40mのトンネルを掘り進んで、新大阪に至るという北陸新幹線の京都延伸計画(2016年)が進められようとしています。驚くことに京都市のど真ん中の地下を貫通するという、類を見ない深刻な環境破壊が懸念される工事です。
この計画は国が議会で定めたものではなく、自民・公明の一部議員の「与党プロジェクトチーム」によって計画され、鉄道運輸機構が建設を行い、その赤字は公費で負担する。誰も責任を負わないやり方で、2023年着工予定でしたが、疑問の声も大きく、環境影響評価も進められないため2023年着工は断念しました。しかし是が非でも推進したい自民党一部議員は、かつてない「北陸新幹線事業推進調査(新規)12億3500万円」を令和5年度予算に計上して、工事を強引に推し進めようとしました。そして2024年着工も困難となり、さらに調査費が上積みされました。
問題点
1.膨大な掘削残土をどうするのか。全く計画がない。
2.土砂に猛毒のヒ素が掘り出される危険。
(伏流水や農作物への汚染)
3.活断層を横切る地下トンネルによる地震誘発の危険性。
4.地下水枯渇の危険。(お酒、豆腐、茶の湯などへの影響)
5.京都駅付近などの市街地でも陥没事故か起きる危険性が
ある。(東京縦貫道の工事による調布での陥没)
6.巨額の税金投入、財政負担は府民に負担。現在見積もり
2兆1千億ですが、実際にはさらに膨大すると見込まれて
います。(保育費値上げ、保育士給与カット、老人福祉
の削減などのしわ寄せや子や孫への大きな借金)
なぜ私はこのことに声をあげるか?
せっかく自然豊かな里山に引っ越してきて、おいしい伏流水、無農薬野菜や合鴨米、四季折々の花々、多くの種類の鳥、動物や昆虫に心癒されてきたのに、まさにわが家の裏山の裏に新幹線工事がやってくる?? 何より一度壊した自然は、二度と元に戻りません。私たちが次の世代に残したいのは大切な自然と、連綿と歴史・文化を紡いできた地域のコミュニティ、この町での暮らしです。どうか皆さん、小さな力を結集して、大きなうねりをつくってこの工事を食い止めましょう。
指導者がいなくても
能勢農場 道下慎一
能勢農場ではよつ葉で働く職員向けの研修を1週目と3週目の土曜日に開催しています。ひとつは農場での作業をしながら、これから拡大していくあか牛の繫殖・放牧について一緒に考えていくためのプログラムで、もうひとつは林業について、農場の職員も一緒に体験するプログラムになっています。あか牛の繫殖・放牧は2頭を2015年に導入してこれまで7、8頭出荷してきましたが、今後は本格的に今の交雑種からあか牛へと牛種を変えていく方向に舵を切っていきます。それに伴って繫殖牛の増頭をしていくとともに、放牧場も拡大、もしくは新たな場所につくっていくことが併せて必要になります。
能勢農場は山に囲まれた所に牛舎や放牧地、寮などの常駐者の生活空間もあります。数年前になりますが、大雨や台風により山が崩れ、それらがもう少しで飲み込まれる寸前にまでなったことがありました。山の木の管理ができていないことが要因でした。そういったことが起こらないようにすることと放牧地の造成をしていくために、木の伐採などの指導に京都で木こりをしている方に月1回の頻度で来ていただくようになりました。
あか牛への牛種変更により、放牧地の拡大も繫殖事業として必要になるため、よつ葉の全体の取り組みのなかでの事業として配送センターの職員にも参加してもらえるような研修プログラムにしました。研修には毎月ではなくても気に入って数回、参加してくれる職員もいます。その一方で、その指導者がいなくても作業ができるように農場職員を中心に技術の取得を目指し集中的な研修もしています。今は地主の方が栗を植える予定をしておられるということで、その場を借りて教えてもらいながら、日当たりがよくなるように伐採を進めています。木の伐採は簡単には行かずまだまだこれからですが、少しずつ習得していきたいと考えています。
林業研修(左が講師の森田さん)
編集委員からの一言
今年は年始早々、元旦の日に能登半島で大きな地震がありました。よつ葉につながりのある生産者をはじめ、多くの被災者の方々に心よりお見舞い申し上げます。
震源地の珠洲市はかつて原発誘致があり市民の運動によって、計画を凍結させた経緯があります。珠洲原発が稼働していれば、今頃大変なことになったでしょう。それは福島原発事故とも当然のことながら重なります。珠洲原発の反対運動に尽力した方々に感謝と敬意を表し、そのような活動の継承に関わっていかなければと改めて思います。
そんな気持ちもあり、福島から避難した菅野みずえさんのインタビューを読みました。震災当時の状況から、放射能の影響と思われるさまざまな症状、避難の現状などを包み隠さずに話してくれています。読んでいると放射能による身体的な影響は疑う余地がないことが分かります。今回の地震によって改めて、この国が地震大国であることが、周知されたはずです。福島であれだけの被害があったのに、これまで原発を手放せなかった政府の姿勢にただ憤りを感じるばかりです。誰が考えても、このままやり過ごせるわけがないことははっきりしているはずです。
(編集部 矢板 進)