2024年3月号(155号)-2
東日本大震災復興の象徴
■リアス海藻店(岩手県釜石市)■
東日本大震災の津波で工場が流されるも、そこから再建。三陸の豊かな海で育った肉厚で歯ごたえがあり風味のいい「三陸わかめ」を中心に、その特長を生かした加工品をつくっている。
最初に、元日に発生した能登半島地震で被災された皆さまに心よりお見舞い申し上げます。被害を受けられた皆さまの安全と1日でも早く平穏な生活に戻られますことを心よりお祈り申し上げます。
東日本大震災から13年の月日がたとうとしています。震災時は「二度と商売はできないのでは?」と思いましたが、月日とともに前に進むことができ、全国の皆さまにはご支援いただき、大変感謝申し上げます。しかし、今でも思うのが「原発事故さえなければ…」という想いです。
数年影響があった風評被害と、昨年度から始まった処理水の放出は口に出す消費者は少ないように思いますが、「意識している方は多いのでは?」と感じております。福島県の常磐自動車道を通過するときに数カ所ある放射線量計測器を見ると今でも東日本大震災と原発事故を思い出す方は少なくないと思います。一生付き合っていかなければならない事態として、日本政府にはさらなる支援をお願いしたいです。
処理水放出後は、まだ商品取引には大きな影響が出ておりませんが、個人客からの問合せで「今度頼むわかめはいつ収穫されたものなのか?」という問い合わせがあったのと、中国からのいたずら電話もたくさんありました。原発被害は忘れられた方がよいのか? 忘れない方がよいのか? 難しい面もありますが、風評被害の影響だけはないようにお願いしたいです。そして三月といえば三陸わかめのシーズンです。海水温の温暖化の影響で生育は遅れ気味ですが、今年もとてもおいしいわかめが育っております。東日本大震災復興の象徴である三陸わかめを今後ともよろしくお願いいたします。
(平野嘉隆)
二本松有機農研との関わり
■しらたかノラの会(山形県西置賜郡)■
2006年から活動を始めた農産加工グループ。できる限り農薬や化学肥料を使わずに農産物をつくり、それを原料にした漬物やもち、惣菜や菓子などの加工をしている。疋田氏が共同代表を務める「NPO法人APLA」は、アジアの“第三世界”に暮らす人々の自立的で持続可能な経済活動と地域活動を支援し、それぞれの国の人々が互いに協働する関係を目指していけるような活動をしている。
元日の午後に発生した能登半島地震。氷見市在住の知り合いに2月に入ってから電話してみたら、「自分たち家族は被害が少なかったけど、地区は多くの家屋が倒壊してるし、能登はもっとひどい」。その後、メールで氷見市内の被害にも対応しつつ、特に奥能登の復旧・復興にも貢献するため、「珠洲市での炊き出しプロジェクト」と氷見市内に民間の支援団体向けの宿泊施設の準備をするとの連絡が入りました。目下、ノラでは米や味噌、漬物など送れる品々を準備中です。何をどう支援していいかわからなかった自分たちが、突如「これならやれる!」と道が開けた感じです。
同じことが、13年前の東日本大震災のときもありました。「前年に多めにつくっていた味噌ならカンパできるね」と、宮城に炊き出しに向かう山形市内の支援団体に託したり、取引先の県内の生協に頼んで福島の被災地に運んでもらったり。100㎏以上の味噌を提供できました。良かったのはつてをたどって物質支援ができたことと被災者の方々と持続的なコミュニケーションを取って未来をともに考える場を持てたことです。ノラの会の前代表の故大内文雄の長兄で、福島県の二本松有機農研の大内信一さんのつてを得て、二本松有機農研とNPO法人APLAが2012年に被災者と外部の支援者がともに福島の未来を考える『福島百年未来塾』を開催しました。ノラのメンバーも各回、山形から参加しました。
二本松有機農研の現代表の大内督さんは信一さんの息子で、若い新規就農者の面倒見もよく、メンバーの一人は6㏊に及ぶ営農型太陽光発電の建設を実現させ、地域型の再生可能エネルギーの普及にまい進しています。
(疋田美津子)
わたしのオススメ
『みんなのちきゅうカタログ』
奈良産直 松本恭明
「君も一緒にパーマカルチャーの冒険をしよう!」東京アーバンパーマカルチャー代表であり共生革命家のソーヤー海さんたちが、子どもたちに向けてつくったパーマカルチャーのワークブックです。楽しみながら学べますし、もちろん大人の皆さまにもお勧めです。
パーマカルチャーとはパーマネント(永続性)とアグリカルチャー(農業)、そしてカルチャー(文化)を組み合わせた言葉で、自然の生態系や循環システムを取り入れ、恒久的持続可能な社会をつくるためのデザイン体系のこと。そう聞くと少し難しく感じるかもですね。この本では「パーマカルチャーは、地球のうえでたのしく生きるためのくらしの工夫のこと。これは世界中の先住民、農家の人、動物や植物たちがやってきたことをまとめたものなんだ」と説明されています。「生きることを工夫する」そのアイデアやヒントが集められた本です。
「お金がないと生きていけない」「電気がないと暮らしていけない」などの思い込みに疑問を抱かせてくれて、異なる選択肢を示してくれます。地球にとっても、全てのいのちにとっても豊かで幸せな選択とは何か、考えるきっかけを与えてくれます。
私は畑を借りて家庭菜園をしているのですが、コンポストやコンパニオンプランツ(注)のことなど、試してみたくなるアイデアもありました。近くに借りられそうな畑がない方でも、飲み終えた牛乳パックやペットボトルを使って、ベランダでもできる野菜づくりのアイデアもあります。それと、この本の絵がとてもステキです。動物、植物、虫、微生物、土、空気…全てのいのちあるものはつながっている。観ているだけで優しい気持ちになれますし、感謝の想いが湧き上がってきます。
そういえば、数年前にソーヤー海さんのワークショップに参加したことを思い出しました。とにかく自然体で優しく、それでいて力強さを感じさせる何とも魅力的な人でした。地球のことを想い、私にもできることがあるのだとワクワクしてきました。さあ、本を閉じて、今ここから一歩踏み出してみます。
(注)違う種類の野菜を混植することで、病害虫を抑えたり生長を助ける方法
監修/ソーヤ海 絵/ニキ・ローレケ、川村若菜
文/福岡 梓
発行/TWO VIRGINS 本体価格 2000円(税込 2200円)