2024年4月号(156号)-2
オリーブの収穫
自分たちの土地を守るため
■オルター・トレード・ジャパン(東京都新宿区)■
フィリピン、インドネシア、フランス、東ティモール、そしてパレスチナなど、自然を守る食べものの交易を通して、世界のパートナーとともに持続的な社会を目指し、地域の食料自給や環境保全から、生産者の生活向上や地域づくりにも取り組んでいる。
私たちオルター・トレード・ジャパンは人から人への交易「民衆交易」を行う会社です。生産者の自立、生産者と消費者が支えあう関係を目指しています。
パレスチナのオリーブオイルは2004年から取扱いを始めました。ヨルダン川西岸地区で栽培されているオリーブから搾ったオリーブオイルを輸入しています。パレスチナはオリーブの原産地とも言われており、数千年前から栽培され、パレスチナ人にとって生活の基盤、文化の象徴となっています。
西岸地区は第三次中東戦争後、占領が進み、ユダヤ人の入植者が増加していました。その後のオスロ合意にて、暫定自治が認められましたが、その後もほとんどの地域で行政権や警察権をイスラエルが握り、事実上の占領が今も続いています。また分離壁や検問所がいたるところにあり、人々の移動や水資源の使用が制限され、イスラエル人の入植地拡大によって土地が収奪されています。昨年、10月7日にガザ地区で発生した武力衝突以降、西岸地区ではこれまで日常的に発生していたパレスチナ人に対する暴力が激化しています。特に入植地近くに住むオリーブ農家は暴力を恐れて農地へ行くことができませんでした。今年、65%のオリーブの木が収穫できなかったとのことです。イスラエル軍や入植者によってオリーブの木は根こそぎ燃やされ、使用していない農地は放棄地と見なされイスラエルによって収奪されています。パレスチナのオリーブオイルを使い続けることで、パレスチナのオリーブ農家に対して現金収入をもたらすだけでなく、オリーブ農家が自分たちの土地を守るための活動に連帯し、その意志を彼らに伝えることができます。
(鐘ヶ江良亮)
平安名(へんな)さん
石垣島のパインは日本一
■真南風(沖縄県名護市)■
真南風は石垣島のサンゴ礁を守ろうという自然環境保護活動からスタートしました。島全体の循環を目指し、農薬に頼らない農業を行うなど、生産者とともに沖縄農業のあり方について考えてきた団体です。よつ葉には季節に応じた野菜やフルーツを届けてもらっています。今回は石垣島のパイナップルの生産者に文章を書いてもらいました。
沖縄県の石垣島は沖縄本島からさらに南西に約400㎞の距離にある小さな島です。台北までの距離が約270㎞なので沖縄本島よりも台湾の方が近いです。そこでパイン栽培を行っています。私が生まれた1960年初めの石垣島は、1950年代からのパイン産業の拡大、好景気もあり「パインブーム」と呼ばれていました。当時石垣島には8つものパイン缶詰工場がありパイン栽培が基幹産業と呼ばれる時代でした。
ところが1970年代に冷凍パインの貿易自由化、大きな気候変動による自然災害、生産環境悪化による離農者の増加、日本復帰後の円高不況、オイルショックを経て1980年代には缶詰工場は次々と閉鎖されることになります。1990年代パイン缶詰の輸入自由化による輸入パインの増加で最後まで残ったパイン工場も閉鎖されることになりました。この時期を境目として加工前提のパイン栽培から生食の商品価値のより高い栽培へのチャレンジが始まり、現在までの生食パイン栽培の継続につながっています。
そんな激動の時代を見てきた私ですが、石垣島はすっかり観光地として有名になりました。コロナ禍を経て観光業は復活をしているように見えます。われわれの世代はもうあと10年もすれば引退しますが、若い世代もそこそこに頑張っているのでパイン栽培は引き継がれていくものと思います。少子化の影響もあるため農業をする人間が減っていくことは仕方がないことですが、農業に興味を持ってくれる人が増えてくれたら嬉しいですね。石垣島のパインは日本一だと思っています。石垣パインの味をいつまでも残せるように若い世代と一緒に今後も頑張っていきたいです。
(平安名貞市)
ちょっと寄ってみ。
身体は自分が食べたものでできている
古民家の宿 奈の音(なのね)
多種多様な薬草の収穫
私たちは2017年に、奈良県宇陀市の築120年の古民家を購入し移住しました。ここ大宇陀には国の史跡「西口関門(黒門)」があって、そこからが松山城の城下町で重要伝統的建造物群保存地区です。近くには樹齢300年とも言われる「又兵衛桜」もあり、室生寺、大神神社、長谷寺にも車なら30分圏内と、春は特に観光客が多く訪れる街です。
家の購入の際、お世話になった観光協会の方から「観光地なのに、街に泊まれるところが少ない」と聞いたことをきっかけにお宿「奈の音」を開業することになりました。そして泊まりに来てくれたお客さまに、ここは薬草と薬の街だと教えていただいたのです。そういえば街なかには日本最古の薬草園「森野旧薬園」や「薬の館」があるし、すぐそこには推古天皇が日本最初の薬狩りを行った「かぎろひの丘万葉公園」があります。また宇陀市は「大和当帰(注)」の栽培に力を入れていることも知りました。冷え性や貧血、血行促進などの効能があり、根っこは漢方薬に、葉っぱはお茶や入浴剤などにも使えます。
早稲田大学主催の薬草ツアーの会場に利用していただいたことで自然療法や漢方の先生とつながりができて、さらに薬草が身近なものになってきました。またいろいろな講座を受講するうちに、「自分の身体は自分が食べたものでできているんだなぁ」と、今まで以上に意識するようになっていました。そんなときに立ち寄ったマルシェで「よつ葉ホームデリバリー」に出会いました。いつも聴いているFMの番組で、よつ葉の商品が紹介されていて気になっていたときです。すでに他のコープに加入していましたが、いいとこ取りさせていただくことにして加入しました。地元産中心の食材で食事を提供していますが、ないものはよつ葉の商品に助けてもらっています。
夢は大きく「宇陀の薬草を全国に広める会」を仲間と立ち上げ、取り組みが本格的になってきました。同じく人間の身体に不可欠な発酵食品もテーマに「薬草発酵博覧会」を開催しています。今年は5月25、26日です。私たちの思いが次の世代に届いて、それをきっかけに宇陀市が活性したらいいなぁと思っています。
(奈良会員 前由美子)
(注)ヤマトトウキ…セリ科の多年植物で、奈良県にゆかりのある薬草