2024年8月号(160号)-1
会員さんの願いをきっかけに
化学物質過敏症への対応の取り組み
化学物質過敏症のことに取り組むようになったのは会員さんからのお便りがきっかけでした。新聞などで取り上げられた化学物質過敏症関連の記事とご自身の症状や願いが記されています。研修部会で共有をしたところ、各配送センターにもそのような会員さんが増えてきており、対応などについてさまざまな意見が出ました。当初は参加者に認識の違いもありました。その後、数カ月にわたり本を読み、講師を招き学びを深めてきました。そのような動きのなかでただ知ることだけに終止するのではなく、よつ葉として具体的な対応を検討することになりました。できることはわずかなことかもしれませんが、新たな取り組みとして動き始めました。職員だけでなく、家族の趣味趣向などプライバシーにも関わる問題でもあるので、ご家族に向けて理解の協力を呼びかけるお手紙の配布もそのひとつです。今回のように具体的な取り組みとなったのも、会員さんの継続的かつ根気強いご協力の賜物だと思っています。今後もさまざまな意見を採りいれながら議論を重ね対応していきたいと思いますので、よろしくお願いします。
(全頁に関連記事)
タイトル欄イラスト(上)©『空気の授業』中井敦子
香りの影響を受ける人たちがいること
ひこばえ 福田久美
化学物質過敏症は香料だけでなく、タバコや農薬、建築材など、さまざまな化学物質に反応してしまう病気ですが、洗濯洗剤や柔軟剤の香りが発端になることも多いため、「香害」と呼ばれることも多いです。特に香りの持続性や消臭のためのマイクロカプセルの乱用で、香料そのものだけでなく、香料とともにマイクロプラスチックを含む化学物質も拡散するようになり、発症者も飛躍的に増えたとも言われています。
誰でもが花粉症のように発症する可能性のある病気で、私たちが配達を行うなかでもここ数年で頻繁に聞かれるようになりました。私たちも2年ほど前から、香害を発症された方からの実体験やメカニズムなどの学習をしてきました。
一朝一夕では解決しない難しさ
職員のなかでも無香料の石けんに切り替えたり、使用量を減らしたりなど、理解は進んできたと感じる一方で、清潔にしようと思って使用してきたことを指摘される戸惑いや香り(洗濯)を注意する(される)のはプライベートに踏み込む(まれる)ようで…など、ニオイや家庭内・家事というセンシティブな問題ゆえにすんなり解決とはいっていません。
そのようなことを自覚しつつ、3月のよつ葉マルシェで【化学物質過敏症を知ろう】をテーマとしたブース展示を行いました。事前の案内チラシにも「来場するときには強い香料の使用は控えてほしい」とのお願いを記載し、私たちスタッフもさらに具体的な商品知識などの事前学習を重ねました。
ブース全体には化学物質過敏症をテーマに描かれた奈良産直の会員さんの絵画やイラスト、小物類を展示し、合わせてよつ葉で扱う製品を紹介し知ってもらう機会にしました。見てくださった方からは「とても可愛らしい絵だったけど、じっくり見ると切実な思いが溢れて涙が出た。私も辛い思いをしています」という共感や「個人の努力ではどうにもならない問題」「過剰な香りはやめてほしいが、もの申しにくい問題」などが寄せられ、一朝一夕では解決しない難しさを改めて実感しました。
そのなかで「マスクを外していても香りの辛さを感じることはほぼなかった。正しい知識を持った方の参加が多かったことがとても嬉しかった」という感想がありました。来場者の方にはチラシでお願いをしただけで特別なことはしたわけではなかったのですが、この香害の問題を多くの人に知ってもらい、「ちょっと」考えるきっかけになったのではないか、その「ちょっと」のきっかけ、働きかけが、この感想となり、この展示をした意味だったと思います。
よつ葉では洗濯石けんや化粧品など、「合成香料」を使用しているものはすべて明記し、無香料、合成香料、天然香料など選べるようにしています。私たち職員も無香料の洗濯石けん類、シャンプーがいつでも買えるような仕組みを整えています。まだまだ不十分ですが、この香りによって影響を受ける人たちがいることを心に留めて、できることから始めています。
産直より - 勉強会や話し合いを重ねて
奈良産直 松本恭明
数年前から「配達員の衣服の洗剤や柔軟剤の香り、煙草のにおいに対して気分が悪くなるのでどうにかしてほしい」という会員さんからの声がありました。その当時は対面せずに置き配や配達員を交代するなどの対応をしていました。
やがて「香害は公害」という言葉を耳にするようになり、2年ぐらい前から職場で香害や化学物質過敏症について、まずは知ることから始めました。今年に入ってからさらに踏み込んで、関連動画を視聴したり本を読んだりなど勉強会を行い、話し合いを重ねて職員間で約束事を決めました。奈良産地直送センターでは車内・倉庫内禁煙、職場で使用する洗剤はよつ葉で購入、においのある保冷箱や通函袋は廃棄、回収した全ての通函袋は水拭きするという対策をとりました。また芳香剤、消臭剤の禁止、自宅での洗濯にて香害に配慮した洗剤の使用を心がけてもらうようにしました。ただこうした対策は職員の家族の理解も必要であり、試行錯誤しているところではあります。
配達員の衣服の香り、煙草のにおいなど気になる方は、遠慮なくご連絡ください。会員の皆さまの思いにできるだけ寄り添っていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
学習会やよつ葉マルシェのチラシのデータ提供など、
ジャパンマシニスト社には多大なご協力をいただきました
化学物質過敏症への対応の取り組み