2026年1月号(177号)-4
あおぞら財団FW報告
被害や苦しみが
消えることはありません
大阪産直会員 かわすみかずみ
11月29日(土)に地域・アソシエーション研究所、大阪産直の共催で、「公害地域再生センター あおぞら財団」のフィールド・ワークに参加してきました。
大阪市西淀川区は阪神工業地帯の一角として栄えた街です。60年前、海抜0メートル以下の海沿いの街に多くの工場が立ち並び、煙突から真っ白い煙が空へ昇りました。洗濯物を干しても黒くなり、何度も洗い直したそうです。赤ちゃんのオムツは洗っても汚れてしまい、母親たちは辛い思いをしました。当時高校生だった男性は学校から帰って鼻をかんだら真っ黒だったと当時を振り返ります。
高度経済成長の真っ只中、各地で公害問題が持ち上がりました。西淀川区では仕事に行けなくなるほど重症のぜんそく患者が急増しました。ぜんそくによる発作で多くの人が亡くなっています。横になると息苦しくて眠れないので、夜通し座って眠ったひともいました。夜間に発作を起こすことが多い患者たちは、朝になると病院に長い列を作り、助けを求めました。
原因は工場の煙と自動車の排気ガスでした。阪神高速や国道43号線などの主要幹線道路では、大きなトラックが排気ガスを垂れ流しながら走りました。また淀川と神崎川に挟まれた地形から、他地域の排気ガスや煙が流れ込んでくることもあり、もらい公害のような相乗的な汚染を被る地域でもありました。
1978年、この地のぜんそく患者らは裁判を起こします。最終的に700人以上が原告となったこの裁判は、道路公団や国、主要企業を相手取って提訴されました。この裁判は全面勝訴的な和解となり、各地の公害裁判に影響を与えました。和解金によって患者たちは「あおぞら財団」をつくりました。
「手渡したいのは青い空」という言葉とともに、公害のない街を目指し、多くの団体や個人とつながりながら地域のあるべき姿を模索しています。今、国道43号線にはPM2.5の検査器や、排気ガスや騒音を軽減する装置が付いています。
工業化の波に押され、生命や健康をないがしろにした、そのつけは今も精算できてはいません。裁判に勝っても、ぜんそく患者の被害や苦しみが消えることはありません。大事なものを置き去りにして金儲けに盲進した過去を忘れてはならないと思いました。
生産者エッセイ
ダイキン公害調停の
説明会に参加しました
ゼンケン 辻 高樹
「浄水器でPFOAは取れますか?」と初めて聞かれたのは2007年。調べると神戸新聞5月22日の朝刊に「発がん性指摘有機フッ素、住民の血中に蓄積、京都大学調査」と載っていました。工場長に尋ねると「汚染源はダイキンです。ホームページにコメントが出ています。PFOA除去に活性炭(ゼンケン浄水器の中身)は有効です」と教えてくれました。グリーンパンに出会ったのは2017年。「欧米は環境意識が高く、PFOA不使用のグリーンパンがテフロンのフライパン市場を逆転しています。日本はフッ素樹脂天国です」と説明を受けました。2021年12月公開の米映画『ダークウォーターズ』はPFOA巨大企業デュポンに一人の弁護士が挑む話でしたが、2023年に翻訳された原作本『毒の水』は映画の10倍すごかった。これは「地球規模の血液汚染」なのだとようやく理解しました。企業の隠蔽(いんぺい)、政府の不作為、汚染は続く。日本の世論はまだまだ眠っています。
私は大阪府茨木市在住なのですが、ジョギングコースの川辺にある水門が下水処理場の放流口であること、そこからダイキン淀川製作所の下水処理水が流れていること、すなわち京都大が調査した「世界最高レベルのPFOA汚染が確認された」地点であることに最近気づき、不安と怒りで愕然(がくぜん)としました。ここからどれだけのPFOAが大阪湾に流れたのか、PFOA中止後の代替物質PFHxAはどれだけ流れているのか。
昨年9月24日、関西PFAS弁護団ダイキン公害調停の説明会に参加しました。「ダイキンは戦前から周辺に影響を与えてきましたが、水俣がそうであったように摂津市は企業城下町なので声を上げられませんでした。本来これだけの報道があればダイキン自ら動かねばならない。地域の信頼関係はどうなる。これを数の力で迫るのが公害調停。住民パワーが必要です」と弁護団長から話がありました。2026年、申請人として引き続きこの問題に関わっていきます。
編集委員からの一言
ダイキン工業の淀川製作所周辺の地下水などで、有機フッ素化合物PFASの一種PFOAが高濃度で検出された問題は記憶に新しいと思います。そのPFASについての記事が日本経済新聞(12/2)に掲載されていました。
PFASの使用用途は多岐にわたり、水や油をはじき、熱に強い性質があるため、半導体製造や衣類、化粧品などで使用されています。一部の物質は飲み水などから人体に入ると、発がん性などのリスクがあると言われています。自然界ではほとんど分解されないため「永遠の化学物質」とも言われています。
記事には、「アパレル大手で衣料品素材として使用することを取りやめる動きが広がっている」とありました。PFAS全種類を使用した商品の販売規制が進むなど、欧米の規制は先行しているとあります。一方で、日本でのPFASの規制は一部の種類に留まっています。ネオニコチノイド系農薬では日本は残留基準値の緩和など、世界の動きに逆行していますので、その流れはPFASでも同じになるような気がしています。
日本では水俣病など多くの公害の歴史があります。その教訓を生かし、私たちが安心して暮らせる世のなかにしてほしい。今の政治に強く求めます。
(よつば農産 横井隆之)
