2025年4月号(168号)-1
パレスチナ西岸地区 ジェリコ産
デーツの取り扱いを始めました
2023年10月7日のパレスチナ・イスラエル戦争の勃発から1年半がたちました。ようやく停戦合意が成立し攻撃は2カ月間、止んでいましたが、残念なことに先月12日に再開されました。2023年10月の攻撃開始の翌、11月にはパレスチナに駐在し、支援をしているパルシックにその紛争の背景について執筆していただきました。また2024年1月にはパルシックの駐在スタッフとパレスチナ刺繍の販売で支援を行っているパレスチナ・アマルの北村さんに現地の状況を報告していただきました。そして10月に1年がたっての現地状況を再び、パルシックの駐在員の方にお話いただきました。今後も現地の状況を知ってもらう機会と支援を続けていきますので、ご支援をよろしくお願いします。
デーツのパック詰め作業
自分たちにできる支援を続けて
関西よつ葉連絡会事務局長 松原竜生
イスラエルによるパレスチナ自治区ガザでの大量虐殺ともいえる凄惨な事態が続くなか、本当に何もできない無力感にさいなまれながらも、各地で学習会や停戦を求める諸活動を行ってきました。
昨年の秋に市民団体とも協力して、高槻市内で開催した現地報告会では、パルシックのパレスチナ駐在スタッフが解像度の高い情報を生の声で届けてくださり、その会場で集まったカンパも使いガザの子どもたち820人に冬服セットを届けることができたと聞いています。(左下写真)
パルシックでは新たなパレスチナ支援のツールとして、年明けから西岸地区ジェリコ産デーツの輸入販売を始め、よつ葉でも今号(180号)よりカタログで販売を開始します。ジェリコは紀元前1万年くらいには人が住んでおり、世界最古の都市だったと言われています。
大昔から水や食べるものに困らない、豊かで穏やかな地域だったのでしょう。ジェリコ産のデーツも世界一の品質だと評価されているそうです。本当なら子どもたちはそのおいしいデーツを頬張って、自分たちの素敵な未来を夢見て暮らしていなければなりません。
しかし、実際にはイスラエルの支配による恒常的な暴力におびえながら、日々を過ごしています。ましてや2023年10月7日以降、莫大な数のかけがえのない生命が奪われ、破壊の限りが尽くされたガザでは、たとえ戦争が終わったとしても、その深い傷が癒えて街が再建されるのにどれだけの時間が必要でしょうか?
関西よつ葉連絡会では引き続きパレスチナに想いをはせ、パルシックをはじめ心ある団体と協力しながら、自分たちにできる支援を続けていきます。
入植拡大に抵抗する人々に想いを寄せて
特定非営利活動法人パルシック 高橋知里
あの「10月7日」から1年以上を経過した2025年1月、ようやくイスラエルとハマスとの間で段階的な停戦合意が成立したものの、残念なことに先月12日に攻撃が再開されました。(2025年3月末時点)。
パレスチナ自治区ガザで未曽有の人道危機が世界の注目を集めていた陰で、パレスチナ・ヨルダン川西岸地区にもイスラエル占領軍が侵攻し、約4万人の西岸のパレスチナ人が国内避難民となっています(2025年1月時点)。イスラエル政府は西岸地区での違法入植地の拡大を急速に進めています。
こうした状況のなか、パルシックはヨルダン川西岸地区のジェリコ県で、マジョール・デーツを生産する、パレスチナ農民を支援するフェアトレード団体「アル・リーフ」と協力し、パレスチナ産のマジョール・デーツの緊急輸入・販売を開始しました。
デーツとはナツメヤシの果実で、そのなかでもマジョール・デーツは果実の大きさ、柔らかさ、コクのある豊かな味わいで世界的に高く評価されている品種です。パレスチナが位置する西アジアは、紀元前からデーツの栽培が盛んだったと言われています。ただ、この地域にマジョール・デーツの本格的な栽培を導入したのはイスラエルでした。
1967年の第三次中東戦争によってイスラエルはヨルダン川西岸地区を占領し、豊かなヨルダン渓谷の土地をパレスチナ農民から奪い、イスラエル人入植者にマジョール・デーツの栽培を奨励しました。
その後、1990年代に「アル・リーフ」の姉妹団体である「パレスチナ農業復興委員会」がマジョール・デーツの苗を入手し、ジェリコのパレスチナ農民によるマジョール・デーツ栽培が始まりました。この取り組みはパレスチナ農民の生計向上だけではなく、パレスチナの土地をイスラエルによる入植拡大から守る抵抗でもあります。
ガザの復興への長い道のり
占領下でのマジョール・デーツ栽培にはさまざまな困難があります。ジェリコ県は乾燥地帯ながら農業に必要な水がある地域ですが、イスラエルはパレスチナ農民に対して水の利用を厳しく制限しています。また、イスラエル軍の検問所が頻繁に封鎖されるため、収穫した果実を出荷するための輸送もスムーズにはいきません。
たとえ戦争が終わったとしても(まずはそれが最重要ですが)、壊滅的に破壊されたガザの復興には長い時間がかかります。西岸地区に住むパレスチナ住民が安心して暮らせる状況にもほど遠いのが現実です。パルシックでは引きつづきパレスチナへの支援に力を入れていきます。
皆さんもぜひ、マジョール・デーツの購入を通して、占領下でさまざまな困難に直面しながらも生産を続ける農家を支え、入植拡大に抵抗する人びとに想いを寄せていただけたら幸いです。
寄付で選んだ服で冬支度