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よつ葉ホームデリバリー

2025年8月号(172号)-1

終戦80年を迎えて 沖縄訪問研修

平和への希求 次世代の責任として

 

 

 

 今年は終戦80年になります。時間の経過とともに当時の実体験を耳にする機会は減ってきています。そんななかで沖縄の状況を振り返ってみると辺野古の新基地建設、南西諸島の軍事化が進んでいます。沖縄では組織的な戦闘が終結した6月23日を慰霊の日として追悼式が行われ、その日に合わせて戦跡と沖縄の現在を巡りました。この季節特有のむっとした空気と強い日差し。80年前のこの頃、この空気のなかで空腹に耐えながら人々が逃げ惑いました。その歴史的経験を体感する旅であったようにも思います。 

(3面に関連記事)

 

普天間基地の説明をする田場さん

 

 

自らの危機感として目覚めさせ、

流れに抗う

 

沖縄物産企業連合 田場典篤

 

 

 肌を刺すような灼熱の太陽の日差し、茹だるような暑さ。統計開始以降最速で梅雨が明けた今年6月の沖縄も相当に暑かった。去る6月23日の「慰霊の日」を前に、21日、22日の一泊二日の強行日程で関西よつ葉連絡会の職員8名が戦後80年を迎える節目として、太平洋戦争で唯一地上戦を経験した沖縄を訪問して反戦・平和を考えるという目的の研修ツアーを実施した。
 
 1日目は貴重な自然環境を脅かし、莫大な税金が投入されて進む米軍の辺野古新基地建設の現場視察と高良沙哉さんと糸数慶子さんによる、南西諸島で人知れず急速に軍事化が進む自衛隊の現状報告の勉強会をした。2日目はオスプレイが駐機する普天間基地を見て、ひめゆり学徒隊が従軍した南風原(はえばる)陸軍病院壕へ入り、平和の礎(いしじ)をはじめとしたひめゆりの塔と魂魄の塔に慰霊と平和への誓いを祈るという内容の深いものとなったと思う。
 
 新基地建設のはかなさ、戦争の悲惨さ、新たな戦争の足音が聞こえそうな状況が参加者にどう伝わり、どう感じられたか。反戦・平和を考え行動する契機になったなら、本望である。

 

 

 

米軍と日本と沖縄の従属的な関係

 

 1945年4月1日に米軍が沖縄本島に上陸。それから80年が経過して沖縄は変わったか。見た目には相当な変化はあるが、残念ながら米軍と日本と沖縄の関係はほとんど変わっていない。階層的な従属関係が連綿と続いている。
 
 表向きは独立した国家であり米国と対等な関係であるかのように思えるが、実際には植民地のような関係が戦後から変わらない。そうでなければ、今もって穏やかな暮らしや経済発展を阻む米軍基地の存在が際立っていること、止むことのない米軍関係の重大な事件・事故が日常茶飯事に起こっていること、また住宅地では不発弾処理が延々と続いていること、遺骨の収集も含めて戦後処理に終わりが見えない状況、そして名護市辺野古では米軍の新基地建設が進み、宮古島や石垣島、与那国島などの南西諸島では自衛隊の駐屯地が建設され、まさにこの国の、この島の軍備増強が進み、戦争準備に向かっているような状況など、あるわけがない。
 
 戦後80年、私のような50代半ばの世代は実際に戦争を経験した方々を身近に持つ人も少なく、1960年代から70年代の日本と米国との関係のなかで、安全保障条約をめぐる反対運動を体験した地力のある世代でもない。だから戦争や日米安保をはじめとして不条理への抵抗や今なお世界で起こる紛争への危機感が低いような気がしている。
 
 ただそれでも、こういった機会に反戦・平和を肌で感じるフィールドワークを一人でも多くの仲間と続けていくことで、戦争や紛争へと続く雰囲気を自分の危機感として目覚めさせ、この流れに抗うことで次の世代としての責任を果たしていきたい。今年もそう誓って6月23日を迎えた。

 

 

ひめゆりの塔の前で集合写真

 

 

 

◎参加者より

 

 今回、沖縄平和研修に参加させていただき、辺野古基地移設の現状、反対運動と、戦争の悲惨さを改めて知る機会となりました。辺野古の基地移設では、海の埋め立てに際して民間の警備会社に加えて、地元漁師の協力、海上保安庁の三重の警備を敷いていることに驚きを隠せませんでした。特に地元漁師を雇った警備は船長に一日5万円の給料。他、陸上や基地前の警備など合わせると一日2200万円もの税金が使われていることは驚愕の一言。またサンゴ礁を移植する研究を進める傍ら、それを大義として海を埋め立てる作業を進めることに、強引な基地建設の意思を感じました。基地に近寄るだけで、シャッターを閉めて話を聞かない警備員の姿勢も「自分たちは後ろめたいことをしてます」という気持ちの現れのように感じました。2日目の南風原陸軍病院壕見学からのひめゆりの塔は悲痛な思いがひしひしと伝わってきました。
 
 二度と戦争は繰り返してはいけない、そして戦争の火種になる基地も絶対に必要ない。そう強く思った今回の沖縄平和研修でした。

(ひこばえ 渡辺圭祐)

 

◎参加者より

 

 今回の沖縄研修はそれまでの価値観を変えるほどの衝撃がありました。初日は辺野古基地をグラスボートで視察。青珊瑚やジュゴンが生息する貴重な海にもかかわらず、工事が強行されている現実を目の当たりにしました。自衛隊による南西諸島の軍備増強など、多くを学びました。
 
 2日目は普天間基地や南風原陸軍病院壕、平和の礎、ひめゆりの塔、魂魄の塔をめぐり、戦争の悲惨さを学びました。特に壕内の劣悪な環境や、ひめゆり学徒隊の献身、負傷して逃げられない人には毒入りミルクを飲ませ殺害。捕虜にならないよう手榴弾を持たせ自決を強要させた事実。胸が本当に締めつけられました。
 
 どの施設でも命の尊さと平和の重要性を実感しました。戦争は人を被害者にも加害者にも変える。戦後80年の慰霊の日直前という貴重な時期に現地で学べたことは一生の財産です。お休みの日にご案内いただいた沖縄物産企業連合の皆さまには心から感謝いたします。現地の声に直接触れたことで、報道だけでは見えない現実や複雑な背景を肌で感じることができました。

(研修部会長/奈良産直 松元信一)