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よつ葉ホームデリバリー

2025年8月号(172号)-2

 

 

温暖化に負けない土壌

 

 

■肥後れんこんの里(熊本県宇城市)

れんこん農家6代目の作本さんが立ち上げた熊本の生産者グループ。現在6軒の生産者が所属し、できるだけ農薬を使わずにれんこんなどの農産物を栽培しています。そのなかでもれんこんは味の評価も高く、よつ葉でも人気の野菜の一つです。

 


スタッフの皆さん

(左端が桐木さん)

 

 数年前までは、異常気象と言われていましたが、今はこの気象が当り前になり地球温暖化が急激に進んでいるように感じます。れんこんは少し前まで完全に無農薬で栽培をしていましたが、れんこんの葉につくアブラムシの発生量が多くなり、収穫量が大幅に減少してしまうため、栽培初期にだけ使用することにしました。


れんこん以外でも昨年は、人文字(わけぎ)などのネギ類を定植した後、3週間ほど雨が降らず活着できなかった苗もあり、収量は例年の1割程度しかありませんでした。数年前までは、時々、夕立があり潅水の必要もなく夜温も下げてくれていたように思います。本年は天候に応じて、雨が降らないときは潅水をしています。


にんにくも(品種にもよりますが)高温障害で、スポンジ球(にんにくの実がなく、皮だけの状態)が多く発生するようになりました。種子が大きいと高温障害の影響を受けやすいと言われているので、大きい種子は定植前に予冷をする。小さい種子は予冷をかけず、今までよりも一週間ほど遅く移植してみようと思っています。地球温暖化に対応するには、定植時期の変更・野菜の品種の選定や土壌の健康を保つような土壌管理が今まで以上に必要になってくると思います。温暖化に負けず、皆さまに安心・安全でおいしい野菜などをつくりつづけていきますので、これからもよろしくお願いします。

 

(桐木尚子)

 

 

 

それぞれの良さを引きだす

 

 

■越後福田屋(新潟県新潟市)

越後福田屋は創業1870年のこんにゃく・ところてんメーカーです。代々受け継がれた製法で安心・安全を徹底し、より良いおいしいものを食卓にお届けしたいと日々製造しています。

 

 

 

スタッフの皆さん

 

 

 越後福田屋はこんにゃく・ところてんをつくりつづけて155年の歴史があります。お客さまから寄せられる「おいしい」という言葉を常に「よろこび」として手がけています。こんにゃく屋の稼ぎどきはおでんや煮物が食卓に並ぶ冬。そんなこんにゃく屋さんにも暇な季節があります。夏です。寒天(ところてん)はこんにゃく屋の暇しのぎにつくりはじめられたと言われていますが、越後福田屋では暇しのぎで製造することなく、丹精こめてこだわりの寒天づくりをしています。
 
寒天の原料となる天草は愛媛天草と伊豆天草の2種類を使用しています。赤紫色の愛媛天草の特徴は「モチモチ」、黄緑色の伊豆天草は「ツルツル」。しっかりとした硬さをしていて、これを合わせることで、それぞれの良さを引き出します。天草を煮出しそのエキスを固めたものが寒天になりますが、煮過ぎてもだめ、若煮えくらいで煮出すのがコツで、天草に若干の芯を残すことで、搾りやすく良いエキスが抽出できます。3回に分けて搾り込む製法で弾力感とコシがあり、天草の香りを活かした寒天に仕上げます。天候や気温によっても微妙な調整が必要で、この作業には熟練した技術が必要になります。そして寒天をおいしく食べていただくために、蜜にもこだわり沖縄県産黒糖のみで作った黒蜜、あんみつには北海道産小豆をビートグラニュー糖で炊き上げたあんを付けています。
 
今年も残暑が厳しくなりそうです。のど越しのよい寒天は、高齢の方からお子さんまで幅広い年代の方にお楽しみいただけます。ぜひ越後福田屋のあんみつや豆かんてんをデザートにこの夏を乗り切ってください。

(遠藤秀生)

   

 

 

ときどき、一筆

 

 

TSMC進出と影響について

 

くまもと有機の会

 

 

 

 TSMCとは台湾に本社を構える半導体受託製造の世界最大手企業です。そのような世界的大手の半導体企業が昨年2月24日に熊本県に工場を設立し、開所式を行いました。食堂のパート従業員を時給3,000円で募集し、周囲の飲食店や小売店の需要が増加するなど、地域に大きな経済効果をもたらしている反面、周辺地域での雇用が難しくなってきています。例えば農業でそのような時給を払えるところはなく、ただでさえ人手不足、経費が高騰するなど、個人商店、中小企業、農業(特に小規模)は大変厳しい状況になっています。約1兆2900億円の投資額で東京ドーム4.5個分のTSMC熊本工場が開所し、最寄りのJR豊肥本線「原水駅」は閑散とした無人駅でしたが、現在では多くの通勤利用客で混雑しています。
 
TSMCが熊本県に進出した理由は、巨額な支援を受けられる日本のなかで半導体産業が盛んで水資源も豊富にあるからです。TSMCが熊本県に与える影響は、新たな雇用機会が創出され地価も高騰するということです。地主にはうれしい話かもしれないですが、酪農や農業で土地を借りていた人が、地価が高騰することにより農地の返還を迫られ、手放す人が急増しています。その結果、TSMC進出後周辺地域では約164ha(東京ドーム35個分)の農地転用が確認されており、農地減少が懸念されています。
 
またTSMC熊本工場では半導体を製造する際に大量の水を消費するため、現在の豊富な地下水を維持できるか、心配する声も少なくありません。近くの酪農家や野菜農家にも影響が出てくると思います。農業が地下水を育んでいることも考えたときに、まさに食料の米より産業の米とされる半導体優先に舵を切った今の状況が、将来、わが国の食料安全保障に悪い影響をもたらさないように注視することが重要になってくると思います。
 
また、半導体工場から出るPFASと呼ばれる有機フッ素化合物で地下水汚染の心配があります。PFASは人体へ悪影響を与える物質なので、TSMCの監視体制を整えることが必要だと思います。熊本県では過去に水俣病という工場排水に含まれる汚染物質により大変な公害問題を経験しており、二度とそのようなことが起きないように取り組んでいかなくてはなりません。食環境と経済のバランスは、熊本に限らず日本全体で考える問題です。