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よつ葉ホームデリバリー

2026年10月号(186号)-3

 

 人工芝は人の健康と

 環境の両方に有害

 

栗岡理子(環境ジャーナリスト)

 

 

 

 いつも緑が広がり、きれいに見える人工芝ですが、実は多くの問題を抱えています。例えば、①マイクロプラスチックの発生、②有害化学物質、③生態系への悪影響、④ヒートアイランド現象や温暖化の加速、⑤ケガ・健康リスク、⑥張り替え・廃棄コスト…などです。
 

欧米などの反対運動では近年、「人工芝」ではなく、「プラスチック芝」という言葉を使い、プラスチック汚染の問題として訴える動きが広がっています。2022年に行われた英国の人工芝への「生態系損害税」の導入を求める請願でもプラスチック芝と表現され、2万6000人以上の署名が集まりました。英政府は課税には同意しなかったものの、人工芝が生物多様性などに悪影響を及ぼす可能性を公式に認めました。しかし、日本ではいまだに人工芝は良いものだと考えられ、子ども向け施設にまで広がり、子どもたちの健康を危険にさらしています。

 

 

●健康に関わるマイクロプラスチックを大量放出

 

 

  

 人工芝はマイクロプラスチックの一大汚染源です。常時紫外線や風雨にさらされる上、人々が踏みつけますから、劣化や摩耗によって大量のマイクロプラスチックが放出されます。近年、さらに細かいナノサイズの粒子(ナノプラスチック)まで分かるようになり、その健康影響に関する研究報告が相次いでいます。例えば、ナノプラスチックは認知症やパーキンソン病、がん、心臓疾患、肺疾患などと関連する可能性が指摘されています。

 

それらプラ粒子の危険性は、種類やサイズだけでなく「表面の状態」によっても変わります。特に、人工芝のように日光で劣化・酸化したプラスチックは、体に入るとDNAを傷つけるなど、健康に悪影響を及ぼす可能性があると研究で報告されています。人工芝から発生する微小なプラ粒子の大半は捕捉できず、環境中へ飛散します。しかし、環境省の注意事項を守れば対策できると誤解し、導入を進める自治体が後を絶ちません。

 

関東学院大の研究(注1)によると、雨の降り始めに人工芝から流出するプラ粒子は平均約0.09㎜、その後、徐々に大きくなり雨が止む頃には0.2㎜でした。しかし、排水溝などに採用されるフィルターの目開きはせいぜい2㎜で、それより狭いと目詰まりが生じます。東京都多摩市が人工芝テニスコートの排水溝にフィルターを仕掛けていますが、捕捉できるマイクロプラスチックは発生量の5%未満だと言われています。

 

サッカー場や野球場などに採用されるロングパイル人工芝(下図)には、何十トンものゴムチップが充填されており、そのゴムチップも流出します。そのためEU(欧州連合)では、人工芝のゴムチップを「意図的添加マイクロプラスチック」として、2031年までに禁止します。さらに、人工芝からは大気中へも微小なプラ粒子が飛散しています。研究では肺の奥まで届くサイズも確認されており、呼吸による健康被害も懸念されています。

 

 

人工芝には重金属や発がん性のある多環芳香族炭化水素など多くの有害物質が含まれています。これらは敷設後、環境中からも吸着・濃縮されるため、時間の経過とともに濃度を増し、有害性を高めることが知られています。また、人工芝には製造時の加工助剤としてPVDF(ポリフッ化ビニリデン)などのフッ素樹脂が使われます。フッ素樹脂は分子量が大きいため体内に入ってもすぐに排泄されるとして、安全なPFAS(有機フッ素化合物)だと考えられていました。しかし、プラスチックの一種でもあるので微細化し、ナノサイズにもなります。微細化したフッ素樹脂が人間の肺や精液などから見つかっています。

 

2025年に発表された研究(注2)では、PVDFナノ粒子をヒト線維芽細胞(注3)にさらしたところ、細胞生存率が低下しました。調べたすべてのPVDF粒子が72時間で細胞毒性を示したのです。フッ素樹脂の安全神話はすでに崩壊しています。人工芝から発生するマイクロプラスチックにはこのような物質も含まれているのです。米国ではPFASを添加した人工芝を禁止する州や自治体が相次いでいます(下)。

 

 

・メリーランド州・・・

2024年10月に発効した州法により、遊び場の表面材料にPFASを意図的に添加した人工芝や、一定濃度(90ppm)を超える鉛を含んだ製品の使用を禁止。

これにより、少なくとも子どもの遊び場ではPFASや鉛を含んだ人工芝やゴムチップの使用に制限がかかる

 

・ミネソタ州・・・

2025年から意図的にPFASを添加した人工芝の販売・流通を禁止

 

・コロラド州・・・
2025年から意図的にPFASを添加した人工芝の販売・流通を禁止2026年から州内のすべての土地でPFASを使用した人工芝の新たな敷設を禁止

 

・バーモント州・・・
2026年から意図的にPFASを添加した人工芝の製造・販売・流通を禁止

 

・ロードアイランド州・・・

2029年からPFASを意図的に添加した人工芝の製造・販売・流通を禁止

 

・メイン州・・・

2029年から意図的にPFASを添加した人工芝の販売・流通を禁止

 

・ニューヨーク州・・・

「カーペット収集プログラム法」が2024年12月28日に発効。人工芝の生産者もこのプログラムに参加しない限り、州内で人工芝を販売できない。

さらにPFASが含まれている人工芝は、2026年12月31日から販売禁止
 

 

注 1)鎌田素之, 2022, 蛍光染色法による人工芝由来のマイクロプラスチックの環境負荷量の検討, EICA, pp.148-150.
注2) Fernandes et al., 2025, https://doi.org/10.1021/acsami.4c22219
注 3)皮膚の真皮などに存在し、コラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸をつくりだして、肌のハリや弾力を保つ重要な細胞
注 4)Garg, 2025, https://doi.org/10.31979/etd.5qa3-bw4t
注 5)Roslund et al, 2020, https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.aba2578