2026年3月号(180号)-1
今こそ 原発ゼロの声を
反原発運動 福島を原点として
あの東日本大震災の原発事故から15年がたちました。2022年に岸田内閣はそれまでの原発依存を低減していく方針から原発新設・最大限活用する政策転換をし、現在の高市内閣にも引き継がれています。東京電力が原発事故を起こした福島では住民の帰還がまだ叶わないところがあります。補償も不十分なまま、廃炉も計画通りには進んでいません。そのような取るべき責任を取れていない東京電力が、柏崎刈羽原発の再稼働に踏み切りました。そして再稼働をした途端に制御棒にトラブルがあり停止。現在、再運転を開始しています。それは15年前の事故を教訓にしているとは決して言えない態度と言わざるをえません。1面では福島の状況と私たちの足元、関西での取り組みを取り上げました。
原発事故から15年、
活かされない反省と教訓
原発事故被害者団体連絡会 武藤類子

イノベーション・コースト構想
(ロボットテストフィールド)
現在の福島県浜通り地域には復興加速化計画の一環である「福島イノベーション・コースト構想」が、ロボット、ドローンなどの最先端技術からクラフトビール工場やカフェに至るまで、莫大な復興予算を投じて破竹の勢いで展開されている。
浪江町にはイノベーション・コースト構想の司令塔となるF―REI(福島国際研究教育機構)を中心とする研究都市を造り、最初の7年間で1000億円を予算とし、世界から50の研究者チームを招聘(しょうへい)しようとしている。その家族のための学校、保育所などが整備されている。
15年前の津波の痕跡が痛ましく残り、原発事故からの避難で打ち捨てられた地域が、大都市の街角にいるような錯覚に陥る場所へと変貌している。しかし、今もその隣り合わせに帰還困難区域が広がる。復興の物語のなかで、事故の被害や避難者、事故後に起きているさまざまな問題が見えなくされ、ないものとされつつある。
東京電力が引き起こした原発事故は収束すらしておらず、現在も原子力緊急事態宣言が発令中だ。帰還困難区域は今も存在し、自宅に戻ることができない避難者が数多くいる。原発サイト内では高線量の放射線が収束作業を困難にし、過酷な被ばく労働を作業員に強いている。県民健康調査によって発見された小児甲状腺がんの患者は、福島県の調査とそれ以外の調査を合わせて407人となったが、原発事故との関連は否定されたままだ。
政府の各省庁や福島県などが広告代理店や大手メディアなどに発注する、汚染水の海洋放出や汚染土の再利用などを進めるための国策プロパガンダが、特に若い人に向けて盛んに行われ、被害者の不安や疑問を封じ込め、住民の放射線防護や人権をますます蔑(ないがし)ろにしている。被害者の望む復興とは乖離した惨事便乗型の資本主義は、福島を再び原子力の植民地にしようとしている。原発事故はひとたび起これば、取り返しのつかない被害を生みつづける。
このような事故を起こし、その責任も取っていない東京電力が柏崎刈羽原発の再稼働を目論み、新潟県知事と県議会が容認し、再稼働した。隣接する福島県は再び原発事故による被ばくの危険に晒される可能性がある。被害者にとっては到底許しがたいことだ。
被災した方々に想いを馳せて
バイバイ原発きょうと実行委員
/本紙編集委員
「バイバイ原発きょうと」の実行委員会に参加してから3年になります。「バイバイ原発きょうと」は3月に集会を終えて、初夏のころには実行委員会を開き翌年の集会準備にかかります。まずはその年の集会の反省点から共有し、そのときの原発情勢を考慮し、翌年の集会の方向性などを決めていきます。参加したばかりのときはその丁寧さに驚きました。若い世代にどのように拡げるかという問題意識を常に持ちつづけ、気候変動問題へアプローチする若者たちとの連携も「バイバイ原発きょうと」の特徴と言えます。また、実行委員が広報・デモ・飲食ブースなどの担当に分かれて自発的に進めていくのは、大きな課題となっている世代承継を促す仕組みにもなっていると思います。
原発にあまり関心のない層にも関心を拡げるためにミュージシャンに来てもらったり、昨年はYouTubeでもお馴染みのせやろがいおじさんに来ていただき、会場は笑いの渦に包まれました。また、昨年のプレイベントにはピアニストの寺尾紗穂さんに来ていただき、コンサートをしました。寺尾紗穂さんのファンも訪れ、会場は満席になりました。このプレイベントでは福島からの避難者の方々にお話しいただき、原発事故当時の混乱やその後の影響についても知る機会をつくりました。寺尾さんの歌は会場全体をやさしさで包むような雰囲気になりました。
今年は岸田政権下から急速に進行している原発政策転換を受け、原発政策の問題点をしっかりと広めなければならないという危機感からプレイベントは大島堅一さんに講演していただきました。(3面「いりあい知」に記事掲載)3月7日の本集会では佐藤和良さん(福島県いわき市議会議員)、高島美登里さん(上関の自然を守る会)などにさまざまな立場からお話しいただきました。
福島の複合的な被害はまだ終わっていません。現地にいないと見えてこないようなさまざまな苦しみがあると思います。いまもそのような思いをされている被災した方々に想いを馳せ、想像することを原点としながら今後の活動につなげていきたいと思います。

2025年「バイバイ原発きょうと」パレード
