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よつ葉ホームデリバリー

2026年3月号(180号)-2

 

 

熊とも共存できるように

 

 

■新農業研究会(青森県平川市)

 青森県でできるだけ農薬の使用を抑えて、安全性とおいしさにこだわってりんごを育てています。自分たちで土壌分析を行い、樹と土づくりに意欲を燃やし、栽培技術の向上を目指しています。

 

 

山形さんご家族

 


りんご農家をして30年目を迎えようとしています。農家同士の会話といえば「剪定終わったが?」というような作業についての会話が普通でした。しかしここ5、6年で内容がガラリと変わりました。気候や獣害に対する会話がほとんどになりました。そのなかでも一番苦しめられているのが、熊による被害です。元々、自園地の隣の山の園地には昔から熊が時々出没して、食害もありました。ただそれほど気にするほどではなく、ある意味共存できていました。自園地に熊が出没し始めたのは3年前の8月下旬でした。初めは「まさか、なんで?」でした。
 
そのうちに自園地周辺での熊の目撃が相次ぎ、そんな矢先の9月中旬頃、友だちの農家のお母さんが熊に襲われました。農家30年、熊と出会った話も熊に襲われた話も聞いたことがありませんでした。幸い生命に別状はなかったものの、次は自分の家族、人夫さん、自分が、と気が気ではありません。熊によるりんごの食害は多くて1、2割程度。収入減につながりますが、「人の生命は守らなければ!」と思います。こんな危険な山の畑で、りんごをつくる必要があるのか…。襲われるようなことがあったらどうしよう…。そんなことばかり考える日々です。
 
熊の出没する畑は沢辺にあり、なるべくその周辺は自分が作業しています。先祖代々受け継がれてきた山の畑を守りたい。自分はりんごづくりが好きで、辞める気はありません。味には自信があります。この先、できなくなるまでつくりたい。熊とも共存できるように家族、親戚、人夫さんの安心安全も考え、少しでも多くの人がりんごを食べて笑顔になれるように学び知恵を出し合い、会員の皆さんに届けたいと思っています。

(山形裕介)


 

 

 

イベントのアイデアがたくさん

 

■北摂協同農場(大阪府能勢町)

大阪府能勢町を中心とした関西よつ葉連絡会の地場野菜を集・出荷している農業法人です。野菜づくりはもちろん、新規就農者の育成、環境への取り組み、生産者と消費者をつなぐ取り組みをしています。

成田さん

(トマトのビニールハウスにて)

 

 

  この春から新たな挑戦が始まります。能勢に移住して15年、「成田ふぁーむ」という屋号で北摂協同農場(以下「北摂」)を通じて会員さんに地場野菜を出荷してきましたが、4月より「成田ふぁーむ」は「北摂」と統合し、6月からは代表という重責が待っています。今までは目の前の農作業に集中していたら良かったのですが、農作業以外にも経営や地域のことも考えないといけません。
 
「北摂」の主な役割は二つ。一つは能勢町の農家さんの野菜を集荷して、よつば農産に届ける集荷業務。大阪府内でも能勢町は新規就農者が多いと言われています。この要因の一つには「北摂」という安定して出荷できる場所があるからです。しかし能勢町でも高齢化による生産者の減少、獣害被害、気候変動など、さまざまな原因によって生産量が年々減少しています。この課題を解決していくために「北摂」が中心となり地場農家が持続可能な営農ができるようにサポートする体制を整える必要があります。
 
もう一つは自社生産業務。農場の広さは約4.5haと結構広いです。この畑で1年間30~40種類の地場野菜とお米を育てていきます。もちろん私一人の力では何もできません。「北摂」の現場の中心は、今年48歳になるのにいまだに若手と言われている私ではなく、間違いなく10代・20代のスタッフです。私の役割は先人たちが仕組みをつくり築いてきた「北摂」を次世代につなぐことだと思います。まずは北摂のスタッフが元気に楽しく農作業ができる環境を整えていきます。24歳のスタッフから「完全に中二病ですね」と言われている私の脳内には、イベントのアイデアがたくさん。今後の北摂協同農場、地場野菜にご期待ください!!

(成田周平)


 

 

 

ときどき、一筆

 

 

いのちを奪うこと、

                     いのちを育てること

蓮ヶ峰農場 峰地幹介

 

 

母豚の「ゆりちゃん」

 

 

 

 

  いのちを奪うこと。いのちを育てること。その狭間で僕はずっと生きている。

蓮ヶ峯農場では鶏を飼いながら、鶏たちと人間用にお米や野菜を育て、冬場は狩猟をして鹿や猪を捕獲し、自社のジビエ処理場で解体をします。獣の対策として2頭の猟犬を飼い、雑草処理部隊として鶏舎の周りには山羊や羊を放牧しています。
 
農場の入口の空地には、乗馬クラブを引退した馬の「ヴィクトリア」15歳が1頭、優雅に暮らしています。また、農場の隣では「田舎の大鵬」という中華料理屋をやっています。それは華やかな中華料理とは違い、捌きたての親ドリのお肉やモツをメインに、近くの川で捕れたナマズやスッポン、裏山のジビエと周辺の野菜や野草を使用した中国料理です。店舗の近くには大きなお母さん豚の「ゆりちゃん」がいて、お店で出る野菜くずなどは彼女の餌に。
 
年に1~2回出産をしてくれて、ここで育った子豚たちは、近所の農家さんにバトンタッチして耕作放棄地に放牧されます。ここでも近所の野菜くずなどを餌にして成長し、放棄地の荒廃を防ぎながら、みんなのアイドルにもなっています。われわれ畜産業というのは、生きものを育てながら同じ数の命を奪います。僕は狩猟もしますから、もっとたくさんの命をいただきます。何といいますか、表現しにくい複雑な感情をその都度抱え、今を生きています。
 
人間は勝手です。ある所では鹿を大切にして、われわれは狩猟をしてジビエとして食しています。片や、お肉になる豚がいれば、「ゆりちゃん」のように、終身雇用で飼われている豚もいます。とっくに馬肉なる馬もいれば、「ヴィクトリア」のように、養老馬として死ぬまで面倒を見てもらえる馬もいます。農村はこれから人がどんどん減っていきます。そうなればわれわれはあくまで人間本位でありながらも、生きもののチカラを上手に借りて、生きていく必要があります。
 
しかし、その関係性があまりにも一方的では、それは絶対に持続可能なことではありません。感謝の気持ちを持ち、愛を持って接して本気で彼らのことを考えることです。それが、これからの農村を守り、つないでいく方法ではないかと僕は考えています。

 

田舎の大鵬

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