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よつ葉ホームデリバリー

2026年5月号(181号)-1

能勢の地域から

 

環境再生型農業に向かうために

「土から学び直す連続セミナー」報告

 

 

 吉村農園の吉村さんが環境再生型(リジェネラティブ)農業の取り組みを始めたきっかけは2018年の西日本豪雨でした。吉村農園が主に栽培するトマトが壊滅的な被害に遭い、地球温暖化による自然災害の甚大化に危機感を持ちました。リジェネラティブ農業は二酸化炭素排出を抑え、できる限り環境に負荷をかけない農法です。能勢では小さな家庭菜園就農者を中心に広まってきており、勉強会やお互いの圃場を見て廻り情報交換もしています。昨年の秋から五回にわたって行われた連続セミナーはリジェネラティブ農業に向かうために欠かせない土づくりについて、重要かつ確実な足掛かりとなりました。

 

 

リジェネで地力アップ

おまけに環境保全

 

吉村農園 吉村次郎

 

吉村さんご家族

 

 

 

 リジェネラティブ農業を試行し始め、また有志で勉強会「りじぇねくらぶ」を立ちあげて、早3年がたちます。一つ疑問としてあったのが「本当に無肥料で作物が育つのか?」ということでした。考えるヒントを与えてくれたのが齋藤毅さんです。
 
配信されているブログを拝読し、また高槻での肥料教室に参加させてもらって、「これはとても大切なことだからぜひ仲間と共有したい」と思い齋藤さんを講師に招いて「土から学び直す連続セミナー」を能勢で開催しました。内容としては土壌の生物性から始まり、地力・地質、窒素、リン酸、置換性塩基・微量要素などの話をしてくださいました。
 
この講座を受けて、「土壌劣化」が大切なキーワードだと思いました。気候危機や放射性廃棄物など資本主義は消費者の見えにくいところに問題を隠しますが、土もまたそのひとつだと思います。お肉を食べるときに気候危機やバーチャルウォーター(注1)のことを意識する人はいるかもしれませんが、日本の農地の劣化を考える人はほとんどいないでしょう。

 

 

ミネラルバランスと微生物の動き

 

 

 

 「土づくり」と称して家畜糞を投入することが奨励されているのに、齋藤さんは勇気を持って耕種農家に「家畜糞の大量投入はミネラルバランスを崩して生産性を落としますよ」と本当のことを伝えてくれています。ありがたいです。最悪の場合、離農や耕作放棄地につながるような甘くない問題です。
 
そして、ミネラルバランスが崩れているのは日本のみならず、世界の農地も同じようです。齋藤さん曰く、世界の農地の60%が慢性的な亜鉛欠乏に陥っていて、それにより植物の防御系が弱くなって農薬の使用量が増えることにつながるそうです。また、食べている人も亜鉛欠乏に陥って病気にかかりやすくなります。
 
そもそも土が酷使されているのが原因なので、改善するには外から良い土を持ってきて入れること(「客土」と言います)や、植物性堆肥を入れることが必要です。が、それには大変な労力が要ります。でも実は一発逆転できる方法があります。それが洪水です。山から新鮮な土砂が流れ込み、かつ不要な塩分を流し去ってくれます。古代エジプト文明はそのおかげで長く栄えましたし、アジアでは水田稲作がそれに当たります。米は本当にかけがえがないです。
 
リジェネラティブ農業では不耕起・ミックス緑肥・輪作混作によって微生物の働きを最大化することを目指しますが、その土台となるミネラルもまた大事だと改めて気づかされました。能勢の土質を考えるといきなり無肥料栽培は難しく、粘土鉱物・植物性堆肥などをうまく使いながら、少しずつ肥料を減らしていくのが無難と思うようになりました。気候危機は閾値(注2)を超えつつあり焦りますが、痛みが大きすぎると取り組めないので、「リジェネで地力アップすれば儲かりまっせ! おまけに環境保全もついてくるよ♡」と呼びかけ、少しずつ輪を広げていきたいです。


(注1)…食料や工業製品を輸入する際、その生産地で消費された水の量

(注2)…ある現象、反応、判定が変化する境界となる
 

 

農家さんの数だけ、農法がある

 

 

北摂協同農場  成田周平

 

 

農家の仕事は野菜を育てるのではなく土を育てることだと思います。健康な土で栽培した野菜は病害虫に負けず成長します。農家は土を育て、あとは野菜が自分たちで育つために少し手助けするぐらいです。今回の連続セミナー」は、今まで何となく感覚的に理解していたことを理論的に教えてもらい、有意義で刺激的なセミナーとなりました。
 
話は変わりますが「〇〇農業」「××農法」という言葉を耳にしたことがあるかと思います。慣行農業、有機農業、自然農法、水耕農法…。農家の名前が付いた農法まで存在します。吉村農園さんの呼びかけで能勢町でも「リジェネラティブ農業」という言葉を聞くようになりました。温室効果ガスを削減し、土壌や生態系を再生する農業。「まさに夢の農法だ! 北摂協同農場も明日からリジェネラティブ農業を始めるので、みんなも一緒に取り組もう!」とはもちろん簡単には言えません。
 
北摂協同農場には地場野菜を出荷してくれる農家さんが100名以上います。その農家さんの数だけ農法、農業の形があります。農家さん、それぞれの多様さこそが地場野菜の良さなんだと思います。
 
近年、SNSの発展により情報があふれ返っています。北摂協同農場としては、より正しい情報を農家さんにフィードバックすることから始めていきたいと思います。最後になりますが、50年後のカタログ「Life」に「成田農法の地場野菜」というページがあったら、その際はご注文下さい(笑)。