2026年9月号(185号)-2
自然の香りと健やかな暮らし
■菓歩菓歩(京都府船井郡京丹波町)■
京都・京丹波町と上京区にある菓子工房。顔の見えるつながりを大切に、関西、国内を中心とした有機栽培、無農薬の素材を厳選したシンプルなお菓子をつくっている。

菓歩菓歩の皆さん
長年製造を担うスタッフの化学物質過敏症の発症を機に挑戦したクラウドファンディングでは、よつ葉会員の皆さまから多大なご支援と温かい励ましをいただき、心より感謝申しあげます。
実は改装工事を進めるなか、もう一人のスタッフも同様の症状で退職を余儀なくされました。化学物質過敏症は誰にでも起こり得ることなのだと、最近になってようやく理解することができました。原因のひとつが、近年普及した柔軟剤や洗剤の「マイクロカプセル技術」です。これは香料をプラスチックの極小カプセルに閉じ込め、衣類に付着させて意図的に香りを長持ちさせる仕組みです。ナノレベルの微粒子は皮膚から体内に吸収されやすく、家庭排水として流出すれば、浄化槽を通り抜けて川や海を汚染し食物連鎖を通じて人体に蓄積していきます。かつて美しかったここ京丹波の田畑や豊かな森からも、今や化学物質の香りが漂うようになり、自然の崩壊に胸を痛めています。
この危機を会員の皆さまにお届けしたことで、大きな転機が訪れました。直接お電話をくださった会員さまから、京都の化学物質過敏症専門の住まいアドバイザーをご紹介いただいたのです。当初の計画では対策が不十分であることが判明し、現在は窓の配置や空気の流れ、換気扇の設計など、工事計画を一から見直しています。一歩後退したようですが、より安全で確実な工房づくりへの道が見えてきました。合成の香りではなく、豊かな自然の香りと健やかな暮らしを守るため、菓歩菓歩はこれからも一歩ずつ歩みを進めてまいります。これからもどうぞよろしくお願い致します。
(石橋香織)
地元産の大豆と水にこだわって
■ゆう豆(京都府南丹市)■
京都府の中央部、豊かな山々に囲まれた美山町が育む清らかな水、京都で栽培された大豆から完全無添加でゆばをつくっている。
地元大豆農家さんと大豆づくり
(左から3番目が太田さん)
ゆう豆では京都市中心部から車で約1時間半、電車も通っていない田舎、美山町で地元産の大豆と水にこだわったゆばの製造をしています。創業は約20年前、美山で生まれ育った店主が「大豆づくりから始めるゆばづくりをやりたい」という想いから、当時美山町ではあまり生産されていなかった大豆づくりをお願いするところから始まりました。
しかし、簡単に大豆生産に取り組んでくれる農家さんは少なく、初年度は約400㎏と年間使用量には全く足りない状況でした。それでも地元農家さんにお願いし続けることにより2年目からはたくさんの農家さんが大豆づくりに協力してくださり、美山産大豆だけでゆば製造ができるようになりました。無添加で地元産大豆だけでつくったゆばということもあり、京都市内のホテルや料亭からの注文をたくさんいただけるようになりました。しかし、農家の高齢化や進行する温暖化により大豆の生産量は減っていくばかり。美山産だけでは生産を維持していけないので少し産地の範囲を拡げ、南丹市や京北町など京都府内産のものを現在は使用しています。
ここ最近の美山では大豆農家さんの若返りも進み、作付け面積を増やしていくことができています。一方で地球温暖化は進行していて、猛暑のために十分な量の大豆を収穫できない状況も続きました。作付け時期をずらしたり、九州地方の品種を試したりと対策を講じてきましたが、十分な効果は得られませんでした。
しかし、昨年高温に強い品種の種をとある農家さんが手に入れて、つくっていただくと今までの5倍以上の収穫量がありました。今年からはその品種をメインに生産していき、再度美山産100%のゆばづくりができるように取り組んでいきたいと思っています。 (太田雄介)
わたしのオススメ
自著紹介
絵本『おなかがいっぱいにならないふぐ』
北近畿産直会員 井口NOCO

この世に生まれてから、死ぬまで。食べても食べても、おなかがいっぱいにならないとしたら…? ゲノム編集によって満腹を感じる遺伝子を壊されたその魚は、幸せを感じたでしょうか。内臓がはち切れそうになるまで食べつづけた魚は、本当に健康体で、食べても安心安全だと言えるのでしょうか。開発企業や国が嬉々としてうたう、“食糧危機を救う夢のような未来の食糧!”
ん? 昔、どこかで聞いたような。
知らぬまに食べさせられ、選ぶ権利を剥奪された私たちは、もはや水槽の中の声のない虚な目の魚たちと同じなのかもしれません。
2021年天橋立のある京都府宮津市で、ふるさと納税返礼品にゲノム編集とらふぐが出品されてから5年。陸上養殖場のあった元関西電力施設の撤去に伴い、開発企業リージョナルフィッシュ社は宮津から撤退し、ふるさと納税返礼品からも取り下げられました。この場所は2028年にサステナブルパークという名前で再開発予定、現在企業誘致が進められ同社の名前が上がっていましたが、今年宮津での養殖事業は廃業届を出されました。しかし、同社は国からの数十億円にのぼる莫大な補助金や大企業からの投資を受け、全国各地に養殖施設を広げています。
養殖の実態については公表されておらず、表示の義務のないゲノム編集魚が回転寿司や給食などで使われても、私たちは知ることさえできないのです。「未来を担う子どもたちに知らぬまに食べさせたくないし、ママさんパパさんにももっと知ってほしい! 声をあげてほしい!」そのように思い、百姓画家の友人と、読みきかせ絵本『おなかがいっぱいにならない ふぐ』を書きました。人間が食べるためだけに満腹の幸せを奪われ、人の手によって造られたふぐくんの小さな命の物語。同じく遺伝子操作され、筋肉モリモリが止められず骨が曲がってしまったマダイさんはうまく泳げません。
「神の領域」と呼ばれるゲノム編集について、親子で話し、考えるキッカケになれば嬉しいです。
